「頭が前へ上へ」では、首の周りのファシア層と僧帽筋、肩甲骨(それと一緒に動く鎖骨)の動きが重要でした。
「背中が長く広く」では、もちろん頭の動きも重要ですが(なにしろプライマリ[primary 主要な]ですから)、特に広背筋―「胸腰ファシア」-大殿筋―脚のファシア、の関係が鍵になります。
胸腰ファシアと新しい発見
「胸腰ファシア」という用語を始めて聞く人も多いことでしょうが、それは腰から背中にかけて解剖学の本で白く描かれている三角形(または菱形)の部分のことです。多くの本で、この部分も含めて広背筋として説明しています。
実はこの部分についての研究が進んだのは近年になってからでした。それまでは、その周りの腹部の重要な筋肉や、三角部分の下にある大きい脊柱起立筋が主に注目されていました。
昨年わたしが実際の解剖をZoomで配信するプログラムに参加したときに、講師が献体の腕を動かしながら、その動きがいかに広背筋を大きく引張って動かすかを示していました。
新しい考え方では、その広背筋の動きが「胸腰ファシア」を通して大殿筋に伝わり、その大殿筋は脚のファシア(「大腿ファシア(大腿筋膜)」と呼ばれています)に繋がっているので、脚にまで伝わる、と考えます。
これは、広背筋の起始(筋肉の始まり)を、主に脊椎や仙骨、骨盤の上の腸骨稜だけと考えることとはかなり異なります。
「広背筋―胸腰ファシア-大殿筋―大腿ファシア」に動きと力の流れがあるのです。
胸腰ファシアと「背中が長く広く」
みなさんはこの4つが関連していて、そこにいつも動きがある、という意識を持てているでしょうか?
残念ながら多くの人がそうなっていないことでしょう。わたしたちの多くがその4つが協調して動くように使っていません。
そのためアレクサンダーが、「背中が長く広く」のディレクションを重要視したのだと思います。
もちろんこのことは、彼が初期の頃にその改善を約束してレッスンを行っていた「呼吸」の質に大きく作用します。
また、「背中が長く広く」はどんな活動を行っていても、その動きの質を飛躍的に高めてくれます。
自分の背中に動きがないと思う人は、それを妨げている要因を探してみて下さい。
その妨げを少しずつ取り除いていくことで、「背中が長く広く」なり、背中に流れが生まれ、それが今度は、「頭が前へ上へ」が起こりやすくなるように作用します。
9月10日(金)に梅田で行うワークショップでは「背中が長く広く」を「頭が前へ上へ」との関連で集中的に取組み、自分にワークするための糸口をつかめるようにします。ぜひご参加下さい。
梅田:http://yasuhiro-alex.jp/kansai-ws/
また関東地区で希望者が3人集まれば、9月4日のWSの内容(募集を打ち切っています)の1dayを企画します。希望があれば下記からお申込み下さい。
http://yasuhiro-alex.jp/sakado_1day/