BodyChanceのプロコースで教えるアレクサンダー・テクニーク教師ヤスヒロ(石田 康裕)のページです。テクニークの歴史や役立ち情報など多くを載せています。教育分野(学校の先生など)での応用にも力を入れています。ヤスヒロは、埼玉・東京でのレッスン、出張レッスンを行っています。機械工学修士で27年間、高校で教えました。

面談・教育相談に活かす

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アレクサンダー・テクニークは教育相談や二者面談、三者面談、生徒指導などで、生徒や保護者と接するときに使うことができます.

相手を安心させる雰囲気を作れるし、何かうまくいかないときに、そこで起こるさまざまな状況の変化に対して、テクニークが先生の反応を変える手助けになるからです。
先生がつい行ってしまういつもの振る舞い、その質が変わると接する人たちの態度も影響を受けます。

それらについて見ていきましょう.

アレクサンダー・テクニークはラポールを作り、維持することを助ける

 カウンセリングを行うときに相手とラポール(信頼関係を築き、相手を受け入れようとする)の状態を最初に作る必要があることは、良く言われています。
そのために色々な手法が提案されていますが、アレクサンダー・テクニークはそのような手法ではなく、それらを使うときの先生が「自分をどう使っているか」を扱います。

ユング心理学者の故河合隼雄は著書「カウンセリングを語る」で、カウンセラーについて
「中学生や高校生のカウンセリングは顔を見た時に決まる。「このおっさんまし。」と思ってくれるかどうかで勝負が決まる。彼らはそういうことを非常によく知っています。」
と書き、先生についても、
生徒が何かを問題を起こしたときに、先生に対する生徒の反応は、「怒らすことを言う」か「素直に謝ってみせる」ということがあるが、それは
「中学生や高校生はうっかり自分の心の中を出してきたらたまらんわけです。こんな大変なことを先生本当に分かってくれますか。まず先生はわからんやろうし、分かったところで一緒になってくれはせんやろうということを、彼らは勘で見破ってくるわけです。そういう大変なことが起こらないためには、先生を怒らすか謝り倒すという方法でやる子が多い。」

からで、そうしながら「先生を試してる」のだと書いています。

みなさんは生徒に、怒らすようなことを言われたときや、心がこもっていないと思える謝罪を受けたときに、どう反応しているでしょうか。
うまく対応できることもあるでしょうが、ときどきは、感情的に反応してしまったり、響かないと思いながら一方的な説明を続けることもあることでしょう。

面談で進路指導を行うときにも、自分のこととして考えようとしないように見える生徒に、無力感を感じながら話しを続けたりします。
そのようなときに、先生が持つその思いは振る舞いに表れますが、実は、それが表れることで、生徒は自分が取っているその態度を続けやすくなります。

アレクサンダー・テクニークを学ぶことで、自分のそのような反応に気づきストップをかけることが容易になります。
もし他に手段がなくて、自分が良くないと思う対応を行っているとしても、それにのめり込まずに相手の情報を受け取とりつつ、いつでも軌道修正できる柔軟性を持てます。

生徒は、先生に何かの意図を見てとると、それに対応するためにエネルギーを使ってしまうので、自分のことを考えることができません。

それでは、みなさんの感情や思い(意図)は、どのくらい外側に表れているでしょうか。

 

思ったことは、身体に表れる

みなさんは、自分が怒ったり、悲しんだり、不安なとき、または生徒たちにどのくらい感づかれていると思いますか。
教師はパーフォーマーなのでそれを演ずることも必要ですが、そのように外にだそうと思っていないときに、どのくらい表れているでしょうか。

アレクサンダーは、わたしたちがある人が怒っていると思うのはその表情や振る舞いに、そう感じさせるものが表れているからだと著書に書いています。
怒りとか、悲しみというような大きな感情の変化だけでなく、いろいろな感情の変化をわたしたちは感じ取っていることは理解できるでしょう。
(生徒は先生の不安や自信の無さを敏感に感じ取る力を持つので、若い先生や、経験があっても荒れたクラスで苦労している先生に、それを感じるとさらにわがままに振る舞ったりします。)
誰かと会話をしていて、相手の気持ちの変化を感じ取れなければうまく会話ができません。

アレクサンダー・テクニークを学んでいると、自分の使い方に新しい考えを持って、それを考え続けていれば、本人にはその変化が意識されなくても、周りの人にそれが分かることを体験します。

わたしたちが自分に持つどんな考えや思いも、身体に表れていると考えることが妥当のようです。
では、その身体の態度の変化は、面談している生徒にどのように影響を与えるでしょうか。

 

先生の振る舞いの影響

わたしたちは言葉のやりとりの内容よりも、身体に表れているボディラン・ゲージや言葉の調子で相手が自分に対して敵か味方かを判断しています。
A.Mehrabianという心理学者が示したメラビアンの法則というものがあって、それによると、人が会話をしているときの3つの要素が「好き嫌いの感情」に影響を与える割合は
言語情報(話の内容)7%、聴覚情報(話し方)38%、視覚情報(表情や態度)55%
なのだそうです。

話の内容で自分への印象を変えようとしても、それは、1割にも満たない影響力しか持たないということですが、実際は、わたしたちは何を話そうかと考えることに多くのエネルギーを費やしてしまいます。

 

浮かんでくる思いにとらわれずに、生徒に寄り添う

もちろん伝えなくてはならない情報があるときは、内容はとても重要です。
ただ、メラビアンの法則は、それがラポールにはそれほど影響しないということを言っているだけです。

先生が面談をしていて、生徒の関係で何かがうまくいっていないと感じるときに、アレクサンダー・テクニークを使うことで、先生が自分を「判断を保留した状態」に置くことができます。
アレクサンダーは、これを「インヒビション(抑制)」と呼びましたが、彼は人の習慣的な反応を止めることが今までと違ったように振る舞うための大前提と考えて、重要だと思っていたからです。
(彼は、自分のテクニークは、「インヒビションの原則」に基づいていると書いています。)

先生がそのような状態になると、生徒の側は先生に寄り添ってもらているように感じ、自分のことを考え出します。
先生の態度から攻撃性を感じて防御する必要がなくなるので、事態に向き合うことができるようになります。

そうすれば、判断を保留していた先生は、そのような生徒の変化から何かの小さな変化を受け取ることができ、次に進む足がかりを得ることでしょう。
このような力は、従来は先生が経験を積むことにより培ってきたもので、先生の資質が大きく関係すると思われていたものです。
それを、アレクサンダー・テクニーを学ぶことで、誰もが新しい自分の力をある程度改善することができます。
それは、楽器の演奏技術がテクニークによって飛躍的に上がることと同じです。

ただ、うまくいくと思ったときに落とし穴があることがあります。
つい調子に乗ってしまい、気づきを持つ状態を失ってしまうからです。

 

方向性が見えたときにも、自分の反応に気づく

話がうまく進んでいくと、今まで見えていなかった新しい方向性が見えてくるときがあります。
そのようなときに、先生の側がそれまであった「どこにでも行ける」という態度を失うことがあり、生徒は会話の上では納得していても、気持ちの上で押し付けを少しずつ感じるものです。

販売店で店の人に商品の説明してもらうときに、多くの店員は最初はオープンな態度で接してくれますが、
その後に、こちらが何かに興味を持ったと思ったら、ある商品に誘導しようとする意図が店員に見えることを経験していませんか。
それがどれくらい現れるかは店員によってかなり異なります。
(わたしはあまりひどくなければ、その流れに乗りますが、大きく感じられたときはそこでやめるようにしています。)

これは、最初は自分の行っていることに注意力があっても、それを続けることが難しいことを示していると思います。

同じようなことが先生にも起きます。生徒と話していて、方向性が見えてくるとつい調子に乗ってしまうのです。
人は、調子に良いと思うときは注意力が失われるのだそうですが、確かに
そこで起きていることの情報を集めながら、いつでも方向を変えることができるという自由さが失いがちになることを感じます。

哲学者で教育学者のジョン・デューイは、アレクサンダー・テクニークのワークを行うことは、「活動の中で考える [thinking in Activity]」を学ぶことだと言いました。
アレクサンダーは、この言葉を気に入って好んで使っていましたが、確かにこの状態を維持することはそう簡単ではありません、それを向上させるためには訓練が必要です。

アレクサンダー・テクニークを学ぶことはこれを続ける練習になります。
この力がついてくると、面談の質が変わってくることに気づくでしょう。

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