F.M.アレクサンダーが、彼の発見を証明していると直接的に認めていた研究には、ルドルフ・マグナス(池袋レクチャーの第2回を見て下さい)と、コグヒル(米の発生生物学者で大学教授)の研究がありました。

マグナスの研究をF.M.は1920年代に知り、それは彼が「プライマリ・コントロール」という言葉を使うきっかけになったと思われますが、コグヒルを知ったのはずっと後の1930年代の後半でした。

マグナスは動物(モルモット、ウサギ、犬、猫、サル)の「反射」を研究し「頭が動いて、身体がそれについていく」こと、つまり頭の動きにより身体の反射が起こり、そのコントロール・センター(制御を行う中枢)は大脳ではなく、脳幹にあることを示しました。
つまり主に「頭が動いて」からの現象です。

コグヒルは、小さなアンブリスト―マ(アメリカイモリの一種)の胚(卵から孵り、うまれたばかりのもの)が、動きを始めるまでの様子を研究しました。

彼はアレクサンダーの著書に寄せた「賛辞」に、自分の研究を引用しながら、動物が何かの動きを行う始める前にすでに多くのことを行っていることと、その重要性について書いています。

つまり、彼は動きが起こるまでのことも扱っていて、それはアレクサンダーのインヒビションやディレクションとも関係すると考えることができます。

コグヒルとアレクサンダー

1937年に、英国医師会会長で、アレクサンダーを支援していたピーター・マクドナルドらの医師は、ブリティッシュ・メディカル・ジャーナルへの書簡で、コグヒルのアンブリスト―マに対する研究がアレクサンダーのプライマリ・コントロールの発見を科学的に証明している、と書きました。
アレクサンダーは、これらの医師からコグヒルのことを知りました。

コグヒルは、アレクサンダーの本を読んだ後ですぐに、彼の研究とアレクサンダーが確立した内容が、脊椎動物の行動の同じ原則に基づいていることに賛成したそうです。

アレクサンダーは、第2次世界大戦でアメリカに逃れたときにコグヒルの所に行くことができて、マイケル・ブロッホのアレクサンダーの伝記には、次のように書いています。

「1940年のクリスマス前の週末にアレクサンダーは、フロリダを訪れました。
彼はキャリントンに「彼の家に金曜日の1時半に着いてすぐにワークを始め、月曜の1時15分まで続けた。私が行った最も長いレッスンだ。とても興味深いものだった...彼はとても病んでいて片足をひどく引きずっていたが、別れるときにはそれはなくなっていた。」と書いています。

アレクサンダーは後に、「コグヒルは彼が教えた中で最高の生徒の一人で、それは行ったことの重要性をすぐ彼が把握したからだ」と言っています。

3日間のレッスンの間にコグヒルは、パラドックス的に「自分は健康な若者として、人生を科学に捧げ、顕微鏡で細かく観察することでこれらの原則を見つけたが、健康を害してしまった。一方 アレクサンダー は、病に苦しむ若者として、鏡を見て同じ原則を発見し、今日の元気な彼になるようにそれを使った。」と言いました。」

このレッスンにより、コグヒルはアレクサンダーの最後の著書「生きている上で変わらないもの」の6ページに渡る「賛辞」を、亡くなる(1941年7月)前に書きました。

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4月29日(月、祝)の池袋レクチャー「アレクサンダーの生涯とその教え方の変遷」第3回では、このコグヒルの研究内容とアレクサンダー・テクニークの関連についても扱います。

資料として、

  • コグヒルのUCLに書いた「賛辞」
  • J.O.フィッシャーの図等の追加情報、ウォルター・キャリントンの論文からの抜粋

を準備して、その教えた内容を見て行きます。
興味のある方は、ご参加下さい。

 

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