アレクサンダーはベッドフォード・レクチャーで、体育大学の2人の女子生徒に対してデモンストレーションを行ないました。
彼の4冊目の「いつも人に影響するもの」 UCLの中で、このときのことに触れていて、「特に優れている2、3人の生徒に、テクニークのデモンストレーションを行うように頼まれました。そのとき選ばれた生徒たちをどのくらい哀れに思ったかを、わたしは決して忘れることはないでしょう。なぜなら、わたしの観点からは、彼らが何を行っても、彼らの使い方はそれ以上悪くなりようがなかったからです。」と書いています。
その学校の先生たちがそれらの生徒を「特に優れている」と思っていたのですから、当時(1934年)の身体教育はまだ相当歪んだものだったのでしょう(1910年代に出されたMSIには、学校で教えている極端な呼吸法の写真があったことも思い出します)。
レクチャーの後半に行ったデモンストレーションの記録は、A4版の日本語訳で5ページほどです。
彼は何をデモンストレーションに選んだのでしょうか。
デモンストレーションの内容
もちろん、いつも彼が教えていたチェア・ワークです。イスに立ったり座ったりを両方の生徒に行わせて、それを聴衆に説明しています。
この記録を見ると、「膝が前に」の指示が思いのほか重要だということが分ります。
それに加えて、「活動の中で考える」の説明を行いながら、最初の生徒にはイスの上で前傾したり後傾する動きを行わせました(もちろんこれは、アレクサンダーがチャア・ワークの中でいつも行っている動きです)。
2番目の生徒には、他に「つま先に乗る」 をやらせています。以前にも書いたように、「つま先に乗る」は、教師養成コースでもトレーニーたちが練習していたとても基本的な動きでした。
これらを通して、「胴体と背中の状態」についてアレクサンダーが何度か言っていることは印象的で、「抗重力筋」という呼び方もしています。アレクサンダー・テクニークで「頭―首―胴体」の関係と言う中で、胴体についても、その状態を見ることの重要性が分ります。
ノン・ドゥイング
もう一つこのベッドフォード・レクチャーで、とても興味深い内容が最後の質疑応答の部分にあります。
アレクサンダーは
「...彼女は、何かを学ぶときには「すること」を上に重ねなければならない、と教わってきたからです...世界で最も優秀な人たちが学びに来たときに、学ぶときに何もすることがないことを信じようとしませんでした...必要なのはただ「同意する」だけなのに、わたしたちは「すること」を重ねようとします。」
と少し謎めいたことを言っています。
それについてのA4で1ページほどの内容は、テクニークの神髄と言える部分になるでしょう。
「ベッドフォード・レクチャー」は「アーティクルズ・アンド・レクチャーズ」の本の中に収められています。「アーティクルズ・アンド・レクチャーズ」の訳は、私のリーディング・クラブで購入できますので、興味ある方はyasuhiro.alex@.gmail.comまでご連絡ください。
また、第7回の坂戸ワンデイは「ベッドフォード・レクチャーを学び体験する」で、7月18日(月)に行います。平日開催の希望も受け付けています。
詳しくは、http://yasuhiro-alex.jp/sakado_1day/ をご覧ください。
WSでは、事前にテキストを読んで来てもらい、解説とデモンストレーションの体験を、1日かけて行います。