「人が受け継いでいる最高のもの」[Man’s Supreme Inheritance MSI]は、アレクサンダーの最初の著作です。
この本の現在の版は1918年版に多少の改訂を加えたものですが、その1918年版は次の3冊を合本し、加筆、変更を加えたものです。
a)1910年 「人が受け継いでいる最高のもの」
(A4にすると50ページ(本文)+15ページ(「呼吸」と「運動感覚」についての以前の小冊子の内容をほぼそのまま掲載)
b)1911年 「人が受け継いでいる最高のもの」補遺(A4にすると22ページ)
c)1912年 「意識的なコントロール」(A4にすると23ページ)
これらはペーパーバックほどの小さい本で、活字も大きかったので、上記に示した分量をから見て、今の本よりかなり読みやすかったことでしょう。
(有名な教師のアイリーニ・タスカーは、この中のc)「意識的なコントロール」だけを読んで、アレクサンダー・テクニークに興味を持ちました。)
1918年版でとても立派な本になりましたが、世界的な哲学者ジョン・デューイの紹介の文が付け加わったことで、本の内容の高さが示されました。
デューイは、本の内容を熟読した上でそれを高く評価しているからです。
(アメリカでは特に良く売れたので、マリリン・モンローの本棚の写真に写っているくらいです。)
このメルマガ(ブログ)は、GWのWS参加者のための準備投稿を兼ねていますが、興味をもった方は、ぜひこの機会にMSIを読んでみて下さい(資料、翻訳文献の販売 | ヤスヒロ アレクサンダー・テクニーク (yasuhiro-alex.jp)。
感覚に任せて行動しないで、考えようとすること。
1907年の「呼吸」の小冊子(「呼吸の再教育を行う新しい方法の理論と実践」など)までで呼吸を売ることをやめて、1908年の「運動感覚」の小冊子(「運動感覚の再教育」)からは、身体全体を取りあげたアレクサンダーは、この1910年のMSIで、「意識的コントロール」を前面に出してきました。
大きな飛躍です。言葉だけでみると、身体技法を教えていたのに、突然、思想家になったように感じるからです。
しかし彼は、考え方のアイデアだけを示そうとしている、とは考えていませんでした。自分が教えている身体を変える技法を、伝えたいだけだったのです。
「意識的なコントロール」はそのために必須な部分でした。
MSIのアレクンサンダー自身の序文には、「この本では、中心になる論点を示し、わたしたちが身体的な完全性をみつけるための方向性を示すことに、限定しなければない。」と書いています。
そのためこの本によって、彼が「意識的なコントロール」で何を示していて、それが今までの潜在意識による行動(感覚による行動)とはどう違っていて、なぜそれが文明化の社会で必要か、をできるだけ具体的な例により理解する必要があります。
この本の内容がどう評価されるかは、先に紹介したデューイの紹介の中の
「アレクサンダーほど、野蛮状態から文明化社会への変化の意味と危険性を明確にそして、完全に理解している人は誰もいないとわたしには思えます...彼は意識的なコントロールを熱心に勧めただけではありませんでした。彼はそれを実現する明確な方法を持ち、それを提供したのです。」という言葉に見ることができるでしょう。
坂戸GW連続WS
今回、坂戸で5月2日から行うGW連続WSでは、アレクサンダーの考え方がわかるように初版と言えるMSI(1910年~1911年の3冊の部分)を取り上げて、次のように進めていきます。
じっくり読む時間を取るわけではありませんが、WSのベースとして簡単に触れていきます。時間があるようでしたら、読んで質問などを考えていてください。
1日目 a)「人が受け継いでいる最高のもの」の前半
(訳テキストの パート1 1、2,3)
2日目 a)の後半
(4,6(アーチャー氏との書簡部分を除く),7)
3日目 c)「意識的なコントロール」
(パートⅡの1、2、3)
4日目 a)の「呼吸」とb「人が受け継いでいる最高のもの」補遺)
(パートⅡの7、パートⅢ全体)
・このWSは定員6人の小人数WSですが、5月2日、4日、5日に1名ずつ空きがあります(WSの参加者は、1000円安い3000円でMSIの訳本を購入できます)。
空きがあれば直前まで受け付けていますので、いつでもお申込み下さい。 http://yasuhiro-alex.jp/gw-alexanderws/ 残席があるかは、http://yasuhiro-alex.jp/で確認して下さい。)