新宿朝日カルチャーセンターでの呼吸についての3回のクラスが先週終わりました。
3回目は腕の動きが、呼吸に与える影響を扱いました。
呼吸や声に、腕が影響を与えていると思わない人が多いですが、実はとても大きな影響を与えています。
試しに立ちあがって、両手を上に挙げてほんの少し伸びをしながら、呼吸をしたり声を出してみて下さい。 多くの人が呼吸が少し大きくなり、声が楽に出るようになったと感じるのではないでしょうか。

日常生活で、多くの人が腕を体に押し付けるようにしていたり(脇を締めるように指示を受けているかもしれません)、逆にリラックスさせようとして脇にだらんとさせています。 どちらも、首と背中の筋肉の適切なトーン(張り)が無くなり、それが顎(アゴ)を前に突き出したり、頭を後ろに落として、肩こりや腰痛の原因を作っています。 体の不調を持つ人は、腕の動きも悪くなっていることでしょう。

腕の構造と適切な高さ

腕の骨の上端は肩甲骨のソケットに収まっていますが、この肩甲骨はとても自由に動けるため、いわゆる肩の位置は多くの人で違います。
肩甲骨が自由に動くのは、肋骨と直接つながらずに、その上に乗っているだけだからです。 肩甲骨は、身体の前面の簡単に触ることができる鎖骨を介して、身体の軸とつながっています。
肩の位置は、その人のいつもいる位置と異なる高さで安定させることができるのですが、それをクラスで示すと、多くの人が驚きます。
無理に肩を持ち上げることはせずに、腕に幾つかの動きを行うことで、 5センチ位は誰でも簡単に変わりますが、10センチ以上変わる人もます。
もちろん普段のいつもの慣れた状態とは違うので、かなり違和感を本人は感じます。

今回のクラスでも、腕でいくつか簡単な動きを行うことで肩の位置を変えて、腕が肋骨を押し下げないようにしました。
この動きを最初自分だけで行うと、腕を動かすときに余計な力を入れることで、効果を生まないことあります。
先生の助けを借りて何回か行ううちに、無駄な力を使わずに行うことができ、自分でも肩の位置を変えることができるようになります。

それができると、肋骨の周りの筋肉が余計な引っ張りを止めるため、肋骨が自由に動けるようになり、呼吸が大きく変わります。
一人一人にそれを体験をしてもらいましたが、みなさん呼吸が変わり、中には声やしゃべり方が大きく変わった方もいらっしゃいました。


腕は何かの動きや作業を行うときにも、必要以上の力を加えることで呼吸の邪魔をします。
ペットボトルを持ったり、茶碗を持ち上げたりするときなどの、みなさんの腕や手に余計な力は入っていないでしょうか。
楽器の演奏者は、難しいフレーズを演奏するときに、腕と手を固めることで呼吸を止めてしまいます。
子供のときのようなしなやかな動きを取り戻すためには、いろいろな場面での自分の使い方を再検討する必要があります。
アレクサンダー・テクニークのレッスンを受けることはそのためのツールです。

 緊張とは逆ですが、普通は良いと言われているリラクゼーションも、多くの人はある部分を弛緩させ過ぎてしまうことで、呼吸の動きにを妨げているときがあります。
過度の緊張も弛緩も、どちらも呼吸にはマイナスに働きます。

活動の中での呼吸

今回は実際の活動として、朗読と歌を行ってくれた方がいらっしゃいました。
自分が行なっていることに対する考えがハッキリしていないとき、体に何を要求しているかが明確でないときに声や呼吸は乱れます。
腕に余計な緊張を取ったあとで、その点に注目して、声が変わることを見ました。
意図を明確に持し、そして妨げを行う緊張がなければ、体は呼吸と声を自然に整えてくれます。
この2つのアクティビティでは、呼吸を直接にすることはせずに、自分の身体を下げようとする瞬間に気づいてそれをやめていきながら、声を相手に届けたいという自分の活動を明確にしてもらいました。
そうすることで、身体はそれに必要な呼吸を自然に行い、周りで聞いている人の誰もが分かる声の変化が生まれました。

人の身体を使うときには、行いたい意図をはっきり持つ必要がありますが、その意図が身体に負担をかける間違ったものだと、人体部分の機能を阻害します。
 それは特に次の7月から3ヶ月で行う、目の使い方にも大きく言えることです。
視力の低下は、その人が何かを見るときの癖で生じたものです。

7月期の朝日カルチャー は「眼」の使い方の改善です。

 何かを見ようとして、眼を頑張らせていませんか。
アレクサンダーは、「眼それ自体に見させるようにする。」ことが大事だと言っていました。それは、無理に見させようとせずに、見る意図だけ(ただしどのような意図を持つかが重要です)をもって、あとは目に任せて放っておくことです。
無理に見させようとして、見るときの癖を作ってしまい視力の低下を招きます。
ベイツメソッドで有名なベイツは、
「なぜ眼科だけが、メガネという松葉づえを処方するだけで治療したと言っているのだろう。外科では、松葉づえを使い続けなければならなかったら、治療が終わったとは言わないなのに。」
というようなことを言っていました。
アレクサンダーを使って視力の回復を図るときには、、見るときに目を含めた身体全体をどのように使うかという根本的な所から考えていきます。