昨日は、今回のシリーズの最終回でした。
・仕事に取り掛かろうとするとき
・話を始めるとき ・楽器の演奏を始めるとき
・歩こうとするとき、イスから立ち上がるとき
などで、みなさんはどの位の頑張りが必要だと考えていますか。
何か1つの動きを取り上げて、実際に試しみて下さい。
そして、その取り上げた動きを、他の人で観察してみて下さい。
真似をしてみることで、違いがよりはっきりと分かることでしょう。
なぜ自分は必要以上に頑張っているんだろう、と思ったら、これから書く内容が役に立つことでしょう。
頑張りのエネルギーはどこに行くか
どのように無駄を行っているかは、人によって異なります。
しかし、身体を全体的に見ると、それはどれも、どこかの筋肉の緊張を招き、伸びやかさとは反対に身体を縮めることにつながります。
(周囲の人に、伸びやかな感じがする人、縮まっている感じがする人、はいませんか?)
伸びやかさがなくなると、次の動きに移るときの邪魔になります。
車の運転で、ブレーキを踏みながら、アクセルを踏むようなものです。
それがより悪影響を持つのは、身体にブレーキをかけながらアクセルを踏むときの重さを、努力の大きさと考えることです。
人は頑張って、努力を行うことで、かなり満足感を持ちます。
でも残念ながらそれは不要な努力なので、満足感とは逆に結果は悪くなります。
演奏や朗読だったら、聞き手が評価するものにはならないし、日常生活の動きだったら、徐々に疲労感が増して行きます。
自分特有な動きは、長い期間をかけて少しずつ作って来たものなので、普通はそのような無駄なことをやっているとは誰もが思わないことでしょう。
これを考えながら、ぜひ周りの人を観察してみて下さい。
どんなに動きが悪くなったり、姿勢が悪くなっている人も、自分でそうなりたいと思った人はいません。
自分が行っている無駄な努力に気づかずに、そしてそれが徐々に大きくなったことに身体が反応しただけです。
遺伝的なことも多少はありますが、多くの場合で、癖のある習慣的な身体の使い方が、長期的にその人の普段の姿勢を作り上げます。
アレクサンダー・テクニークのインヒビション
それを変えるには、どこから始まれば良いでしょうか。
アレクサンダー・テクニークのレッスンを受けて先生に気づかせてもらう、ということが手っ取り早い方法です。
自分では余りにも慣れてしまい気づけなくなっている動きに、新たな発見ができます。
しかし、それ以外に自分でできることがあります。
アレクサンダーは、現代の人間の問題点は、「結果にすぐに飛びつこうとしてしまう」ことだ、と言っていました。
それに対処するために、彼は「立ち止まる」ことを提案しています。
これは、誰もがすぐに自分の生活の中に取り入れることができます。
アレクサンダーは、すぐに習慣になった動きを行わないことを「インヒビション(抑制)」と呼びました。
◎イスから立ち上がる動きに、インヒビションを使う
今回の参加者には、わたしの「立ってください。」と言う言葉に、反応しないようにすることを、試してもらいました。
大半の人が、「立つ」という考えが浮かんだだけで、胴体を前に押し出そうとするなどの、何かの身体的な反応をしました。
ぜひ、ご自分で「立とう」と思いながら、身体の動きを起こさないように試してみて下さい。
これに反応しないだけでも、大きな進歩です。
もちろんこれだけでは、いつまでも立ち上がることができないので、その後の動きはわたしが助けを行いました。
しかし、完璧を狙う必要はありません。
完璧に立って、本人が満足しても、普通の人から見れば変な人でしかないことでしょう。
重要なことは、一度「止まる」ことができれば、普段の「立ち上がる」という考えで立つにしても、動きの質が変わることです。
昨日も、わたしが助け行う前に、本人でけでそれを行ってもらいました
周りの人は、変化が起こることが分かります。
(残念なことに、やっている本人は、そのように大きく変わったと感じないことが多いのですが。)
1日に2~3度で良いので、1ヶ月を続けてみて下さい。
(簡単に書きましたが、これができる人は、本当に意志の強い人で、それはめったにいません。)
■昨日のクラスでの実際例
昨日のクラスでも、朗読する、歌う、歩くなどで実際の例を見てみました。
何かを始める前に、自分の身体に「不必要な準備」をしていて、それが身体に下向きの力をかけていることを観察しました。
頭の動きを考えてもらい、それが上方向に行こうとすることで、余計な下向きの力が無くなります。
その結果、声や音程が良くなり、そして楽に行えるようになったことを、参加した方々は見ることができました。
頭のトップジョイントでの動き
昨日は、頭と首の間にある小さいが重要な筋肉「後頭下筋」についても簡単に説明しました。
わたしが助けを行いながら、トップジョイント(頭と脊椎の一番上の椎骨とが作る関節)での繊細な動きを、一人一人に経験してもらいました。
その動きが、正しいものになったときに、身体全体に今までに無かった動きが起こることを、何人かが体験しました。
アレクサンダー・テクニークは、そのような身体の全体的な動きを回復させることが一つの目的です。
■「呼吸全体を変えるアレクサンダー・テクニーク」
次回4月からの3ヶ月コースは、呼吸を取り上げます。
アレクサンダー・テクニークがベースなので、やっていることが全く変わるわけではありませんが、
呼吸とはどういうものかを、深く知ってもらいたいと思います。
ただの理論的な理解だけでなく、実際の自分の呼吸の変化を捉えることができるようにします。
アレクサンダー・テクニークは、自分を変える技術なので、自分と関連づけて学んで下さい。
呼吸はわたしたちの生きる活動の最も基本と言えるものなので、その改善は日々のエネルギーを高めてくれます。