「プライマリ・コントロール」は、アレクサンダーが自分が発見した「頭―首―背中」の関係を表わすために使った重要な言葉です。
その考え方はアレクサンダー・テクニークの根本をなすものですが、彼が「プライマリ・コントロール」と言う言葉を使いだしたのは、1932年に出版した「自分の使い方」からで、それまでの2冊の本では使っていませんでした。

「プライマリ・コントロール」という言葉は、動物の姿勢のコントロールについてドイツのユトレヒト大学のルドルフ・マグナス教授が書いた論文に負うところが大きいようです。
マグナスはイギリスで脳神経の分野で大御所と言えるシェリントンに学んだ人ですが、その論文の内容は1923年11月のブリティッシュ・メディカル・ジャーナルで紹介されました。
マグナスはその後の1925年と1926年にその内容について、イギリスでレクチャーを行っています。


アレクサンダーの医師の友人たちがマグナスとアレクサンダーの類似性に気づき、それを紹介したときには彼は大いに興奮したことでしょう。
アレクサンダーは、1941年の4冊目の著書「生きる上で変わらないこと(略称UCL)」で、
「わたしがこのコントロールを発見し使い始めてからおよそ28年後に、故ルドルフ・マグナスはその発見を報告し、チャールズ・シェリントン卿は、彼の王立協会の会長講演でこの報告について言及しました。」
と書いています。
「頭がリードし、身体がついてくる」といるフレーズもマグナスが使ったものです。

マグナスの1925年のレクチャーは、動物の身体が持つ「反射[reflex]」により、頭と首の動きがどのように身体全体の動きに影響するかを説明しています。

「反射」は、とても重要で、このレクチャーの中でもマグナスは、
「私たちは筋肉活動は疲労し易いと思っています。もちろんそれは動きを行うとき、特に抵抗に逆らって行われる動きについては本当です。しかしながら、体のある部分をいつも変わらない位置に保つための筋肉活動では、疲労はかなり少なく、頭によって引き起こされる「姿勢の緊張性反射」は実質的に疲れを知らないようです。」
と書いています。

「反射」については、アメリカでアレクサンダーから教師養成トレーニングを受けた有名な故F.P.ジョーンズは彼の著書「Freedom to choose」の中で、その言葉を30回以上も登場させています。
彼はその本の中で、テクニークを体験して努力を伴わない動きの体験をしたときに、
「わたしがその作用を全く知らないいくつかの反射が起きていると感じた。」
と書いています。

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2月11日(月、祝日)のレクチャーでは、これらの内容についても扱います。
興味のある方はぜひご参加ください。
 「アレクサンダーの生涯とその教え方(2回目)」

資料として、マグナス教授のレクチャー「動物の姿勢」のヤスヒロ訳を添付します。(原文はA4で15ページ)
レクチャーなので、読み易くなっています。