先週金曜日(12月21日)は、今回の3回シリーズ最終回のクラスでした。

忘年会シーズンの金曜日の夜ということで、登録された方々の半分の出席しかありませんでしたが、そのためにいつもより一人一人に時間をかけてワークを行うことができました。

最初にいつものように、イスに座って人の話しを聞いている状態や、そこから立ったり歩いたりすることについてワークを行い、その後で今回のテーマの「声」に移りました。

身体と声はすぐに変わるが、それを妨げるものがある。

他の方がワークを受けているのを見て、参加者の全てがすぐに分かることですが、座り姿勢や、立ち姿勢、歩き方、呼吸、朗読や歌のときの声は簡単に変わります。

継続して参加されている方々にとっては、これはもう当たり前のことです。
今回のシリーズに始めて参加された方の一人は、参加者それぞれがワークが進むにつれて声などが大きく変わっていくことにとても驚いていました。

声や呼吸も含めて身体は簡単に変わるのですが、その変化は頭で行なっている「考え」による起こります。
クラスでは、それぞれの人に染みついた身体の基本的な使い方を効率的なものに代えることと(それも考えによってです)、活動に何を考えているかを変えてもらうことで変化が起きます。
しかし、特に日常生活等でいつも行っている無意識的な考え方については、それを変えることにはしばらく時間がかかります。
(ワークを受けている人が、自分に起こっている大きな変化を自分では感じられないことも、自分で行うことを難しくしています。)

多くの人はこの困難を理解していません。
1回でも自分でできたら、その感覚を思い出すことで、すぐに達成できるだろうと思ってしまうのです。
その変化は、考え方を変えたことで起きたのですが、それをせずにうまく動いた感覚を頼りに行おうとしてしまいます。

そのような間違いを多く体験し、うまくいかないで苦しんだ体験を積んだ人が、本当にアレクサンダー・テクニークの真価を理解をできて、長期的に続けることで大きな変化を自分に作り出します。

アレクサンダー・テクニークは他と何が違うか

今回のクラスで参加者の一人から「アレクサンダー・テクニークは他と何が違うのか」と聞かれました。

そのときは、「頭の動きが、身体全体の他の動きに影響を与える」という何よりも重要な原則を説明しました。
これを基にして、身体全体に良い影響を与える頭の動かし方を学んでいきます。こう言うとシンプルですが、それにはいろいろな要因が影響することが分かってきます。
これがないと、良い考えを持っていても、それを無理に行おうとして自分の身体を固めてしまうことが良く起こります。
わたしたちは学校教育や家庭教育で、「頑張る」ことを誉められてきたので、なかなか抜けだせません。

クラスでは話さなかったのですが、他に次のこともあるでしょう。
・身体の動きを筋肉を無理に使うことでは行わない。身体は全体として働いている。
ほとんどの人が、必要な力以上を使って身体を動かしているのでエネルギーの浪費を生んでいます。
またそれによる身体緊張は柔軟性を失わせ、身体が全体として働けなくなるため、活動の質が落ちます。

・「習慣となっているものは、とても変えることが難しい」ことを理解していて、それにどのように取り組むかが、テクニークの主な内容になっていること。
これについては、すでにこのブログの最初にいくらか述べました。
このために、アレクサンダー・テクニークはボディワークというよりマインドワークです。

 

声を使うときの身体

朗読でも歌でも、声には身体各部の使い方が大きく影響します。決して、多くの人が考えるように喉や口の周りだけの問題ではありません。
立ち方や座り方によって、呼吸が妨げられるし、脚や腕を固めていると発声に必要な部分が動けなくなります。
朗読では、本を持ち上げる腕の動きを変えるだけで声が大きく変わります。

声を使うときにはまず身体の使い方で、妨げとなるものをなくす必要があります。
今回のクラスでも、各参加者に最初にその観点からワークを行い、次にそれぞれの参加者の状態にあわせて進めて行きました。

 

直接的に声を変えようとすると、身体の緊張を生む

今回試してもらったことは、声を大きくするなどをしないで、考えを変えてもらうことでした。
その結果として、声が大きくなることもあります。

意識して大きな声を出したり何かを起こそうとすると、身体に負担になり、響く声や本当の大きな声を出す妨げになります(本人にとっては、身体の緊張を感じることで自分が大きな声を出している気にはなるのですが)。

そうせずに考えを変えるために、「聴く人を招待する」「聴く人に届ける」「広い空間の中で声を出している」などを使いますが、それはその人の状況に合わせます。
言葉で「~を考えて下さい」、と言っても、その解釈は一人一人異なるからです。
ある考えを持つということは、その人の身体の使い方との関連の上で見て行かなくてはなりません。

それがうまく行くと、考えたことに合わせて身体がどう実現するかを調整してくれます。
アレクサンダーは、晩年に「余計なことをすることをやめれば、正しいことはひとりでに現れる」と言いました。
起こしたいことを、「意識的にやろう」とするとうまく行かないのは、人が自分の身体をコントロールするときの不思議です。

今回も、朗読と歌で変化が大きく表れました。
参加者それぞれが、それを実感されたことと思います。

 

来月1月18日(金)から始まる3ヶ月シリーズは

「理論と動きで体験 アレクサンダー・テクニーク」というタイトルで、
日常生活の動きで体験しながら、テクニークの基礎的な考え方に焦点を当てます。

大元の考え方を知りたい方、基礎を知りたい方はぜひご参加下さい。

朝日カルチャーで行った内容についての過去のブログ