ジョーンズは「フリーダム・トゥ・チェンジ」の12章に、彼の主な実験結果をまとめていて、この章だけで30ページほどあります。
アレクサンダー・テクニークを本来あるように使ったときに、筋肉の筋電図の値や人の動きの軌跡、頭と首のX線写真がどう変わるかなどについて、とても興味深い結果を見ることができます。
それらは、テクニークを学ぶときに理解の助けにもなります。

フランク・ピアス・ジョーンズはギリシャ古典の学者だったのですが、専門違いの「人の動きの科学的な研究」に取り組みました。
彼には専門性の欠如を補ってくれる大学の専門分野の先生たちの協力があったし、20年以上に渡って取り組んだことで、その成果は広範で質の高いものです。
(今日最終回だったNHKの朝ドラの「らんまん」を、ときどき見ていました。主人公のモデルになった植物学者の牧野博士も小学校中退という学歴だったそうです。F.M.アレクサンダーも15歳までしか教育を受けていません。)

F.P.ジョーンズが研究を始めたきっかけの1つは、F.M.アレクサンダーが南アフリカで起こした名誉毀損裁判です。
その裁判でアレクサンダーは勝訴したのですが、その判決文は、アレクサンダー・テクニークが科学的に正しいとは言ってはいません。それどころか、良く引用されるルドルフ・マグナスの研究成果は、アレクサンダー・テクニークの「プライマリ・コントロール」の証明にはならない、と言っていました。
つまり、裁判でテクニークについての科学的な証明がないことが、浮彫りになったのです。

また、ワークを行って障害を持つ人に結果をだしても、その改善はテクニーク以外の原因で起こったと医師たちから判断された経験を、ジョーンズ自身もしていました。

そのような状況の中で、ワークを受けた患者から多額の実験資金の寄付があったことで、彼は研究を始めました。
最初に、「筋電図計」を購入しています。

 

「フリーダム・トゥ・チェンジ」の12章にある主な研究内容は次のものです。
(それぞれアレクサンダー教師にガイドされたときとそうでないときを比べています。)

・良いと思える姿勢になったときの筋肉の筋電図の違い

・座り位置から立ったり、立ち位置から座るときの身体各部の通る道筋(軌跡)の違い

・歩いたり、階段を上がったり降りたり、するときの身体各部の軌跡の違い

・リラックスした座り姿勢から姿勢を直したときの頭と首のX線写真

・上を見上げたときの頭と首のX線写真

これを見ると分る通り、ATの動きでこんな測定を行ってみてはどうだろう、というものがほとんど網羅されていることが分ります。
つまり、とても基礎的なものと言えて、その内容を理解することで誰もがATの学びに役立てることができるものです。

第12回坂戸ワンデイWS「F.P.ジョーンズが行ったアレクサンダー・テクニークの科学的基礎研究」(11月26日(日)開催予定)では、「フリーダム・トゥ・チェンジ」の12章と、彼の研究論文と文書を集めた本「Frank Pierce Jones Collected Writing of the Alexander Technique」の内容を学びます。