カラ・ステッコの「ファシア系の機能解剖アトラス Functional Atlas of the Human Fascia System」の英訳本(大型本で374頁原著はイタリア語。和訳本「筋膜系の機能解剖アトラス」もあります。)はファシアを中心に書いていて、従来の筋―骨格系の身体の見方を大きく変えるものです。
筋-骨格系の考え方だけではしっくりしない、という人にはまさに求めていた知識になるでしょう。
ファシアを基礎から、そして実際の身体構造と結びつけて学びたい人には最適で、まさに「ファシアの教科書」と言える本です。

この本はページ数は多いですが、半分以上は写真だけ、または一部が写真になっているページで、さらに8章ある本の各章に2~4のページの参考文献が挙げてあるので、本文はそれほど多くはありません。
この本の写真を見て驚くのは、実際の人体は解剖学の本で見るものとはかなり異なることです。「ファシア」という普通の本ではほぼ無視しているものについてはもちろんそうですが、普通の筋肉でさえ、普通の解剖学の本から想像していたものとはかなり異なります。
この本に書いてありますが、人のファシアの研究で難しいのは亡くなってすぐの人の解剖を行う必要があることです。人体は死後すぐに水分の状態が変わるので、防腐剤処置を行った死体は、生きているときとは生体の構成がかなり変わるのだそうです。

実物の写真が意味があるのは、この本の本文を読んだだけでは想像しづらいものが、明確になることです(実は写真だけでも十分ではありませんが、Webページで見ることができる付録の14本の短いビデオがとても役立ちます)。
これだけの実際の証拠を分りやすく示してもらったことは本当に感謝です。

1冊の本として、基礎から学べるように書いてあることにもこの本の意味があり、まさに学校の勉強のように、教科書として何度もじっくり学ぶ価値のある本だと思います。
わたしは昨年からの3回のファシアのレクチャーを企画して、色々な本を渡り歩きながら、ようやくこの本に巡り合いました。
部分的な知識は例えばアナトミー・トレインの本などにありますが、全体像が見えずにモヤモヤしていたものが、この本でようやくはっきりしてきました。その全体像があると、他の文献の知識の意味も見えてきます。

アレクサンダー教師の観点から(それは、動きを教えるどの教師にも言えます)役に立つ本ですが、いかんせん英語で書かれているので、英語の医学用語はそれほど難解ではないとはいえやはり苦労します。
だからといって、日本語の訳書(英語が9,000円ほどなのに、14,300円と高価です)を見ても、意味不明の単語と文が並んでいて、消化不良状態が続き、欲求不満が増えるだけです。

そのためこの本のオンライン勉強会を企画しようと思いました。
この本の次の8章構成
1章 結合組織
2章 表層ファシア
3章 深層ファシア
4章 頭―首のファシア
5章 腹部のファシア¥
6章 背中のファシア
7章 腕と手のファシア
8章 脚と足のファシア
に沿って8回(前期4回、後期4回)で行います。
時間をかけて読んで、自分の中にある程度しっかりした知識として残したいと思う方はぜひご参加下さい。http://yasuhiro-alex.jp/stecco_online_seminar/