新宿朝日カルチャーの月1回の3ヶ月シリーズ「集中力と持続力を高めるアレクサンダー・テクニーク」が一昨日から始まりました。
今回は参加者は9名で初めての方が3人いらっしゃいました 。
2回目からの参加もできますので、興味を持ちましたらぜひお申込みください。

最初に、テクニークの概要と、それがデスクワークを行うときに集中力と持続力にどう関係するかを理解してもらいました。
こでは最初に、そこでの内容と別の視点から書いてみます。

「姿勢」という習慣の特性

デスクワークを行ときにイスに座るだけで、もう個人個人の特徴が表れています。
皆さんは職場の同僚や身近の人については、顔を見なくても、座っている姿を見るだけで、誰かが分かることでしょう。

アレクサンダーは、4冊目の著書「生きていく上で変わらないこと(略称UCL)」の中で、ある人の姿勢について
「それはまるで、足が床に固定されたままで、来る日も来る日も、より一層、首に巻きつけたロープで前へ下へと引っ張っているようなものだ。」(UCL2章)
と書いていますが、これがまるで多くの人のデスクワークのやり方を説明しているように思えます。

各人の座り方にはそれぞれの習慣が表れていますが、習慣というものは長い年月をかけていろいろな要因が組み合わさってできてきたものなので、そう簡単には変わりません。
また、それには、心的特性による影響も見逃せません。

このことについて興味深いことに、アレクサンダーは先の本の中で、アルコール中毒や喫煙を人の姿勢の悪さに例えています。
「その感覚体験がそのような中毒の大部分を占めるもので、そのような耽溺に至る有害な作用を行いますが、それは人が立つ、座る、歩くを行うときのバランスの保ち方に「自分の使い方」をある有害な方法で行うことに耽溺することと同じです。」(UCL5章)

彼は耽溺 [indulgence] という強い言葉を使っています。
わたしたちは多くの場合で、自分の姿勢が悪いと思っていても止められないことがありますが、それはアルコール中毒などと同じ面があるということです。

それは、立っているときや座っているときの悪い姿勢には、その人にとって、何らかの楽しみ(良い所)があるからです。
そのため、最初にそれを行い、だんだんと習慣になり、その感覚的な楽しみを手放せなくなってしまっています。

そうだとすると姿勢がなかなか変わらないことは理解できます。

アレクサンダー・テクニークの「姿勢」へのアプローチ

アレクサンダー・テクニークでは、身体の各部分の位置を直接変えるような方法では姿勢を変えようとせずに、「自分の使い方」を変えることで間接的にアプローチします。
直接的な方法はではうまく行かない事を知っているからです。
(ときどき、先生が教えているときには、直接位置を変えているように見えるときがありますが、そのときにはその前に、頭と脊椎の関係に指示を行っているはずです。)

もちろん、その悪い習慣が軽症な場合には、直接的に変えることができるように見える場合もあることでしょう。
この点に関してはアレクサンダーはとても厳しくて、そのように直接的に変えた場合には、問題の個所は良くなったように見えても、必ず他の部分にもっと悪い後遺症を残している、と指摘しています。
身体のどこかに筋肉緊張を残していることが多いからです。

これは、姿勢の悪い人が良くするように言われて「背を反らして」もそれは長続きしないどころか、無理にそれを続けたら腰痛の原因になってしまうことがあることと関連します。

作られた「良い姿勢」を頑張って続けないことの方が、正常だということです。
「良い姿勢だと思っているもの」を続けることができないことは、自分の身体が健康だからなのかも知れません。
その「良い姿勢」に問題があることが多いからです。

姿勢に関しては
「無理に頑張ることは、どんな場合で行いたいことではない」
ことを、頭に入れておいてもらいたいと思います。
「無理に頑張る」取り組みを変えていくことが、アレクサンダー・テクニークを学ぶことです。

アレクサンダー・テクニークでは、自分の「使い方」に眼を向けてそれを変えていくことで、その「結果」としての「姿勢」を間接的に変えて行きます。

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