感覚はあてにならない

アレクサンダーは、「わたしたちの感覚認識はあてにならない」と言っています。
ワークを受けていて
・「前に傾いている」
・「背中を丸めている」
・「お尻をみっともなく突き出している」
とう感覚が起きても、実際はそうなっていません。

姿勢に対するわたしたちの感覚は、主に直前の状態からどう変わったかを教えてくれます。「腰を前に押し出している人」は、いつも胴体が後ろに傾いているので、垂直に戻ると、前傾していると感じます。

自分の「真っ直ぐ(垂直に立っている)」などの感覚認識はあてにならないため、自分で姿勢に取り組むときには、感覚を参考程度にして、鏡の助けを借りたり、他の人の意見を参考にする必要があります。

引っ張っていることやめることで変える

左の図は、適正な張りを左右のロープに持たせて、柱を垂直に立てているものとします。

 

 

これを、右側のロープをさらに引っ張って、柱を右に傾かせたと考えます。

 

みなさんは、どのように垂直に戻しますか。
それには、
①左側のロープを引っ張る
②右側のロープを緩める
の2つの方法があります。
元の状態に戻すのであれば、多くの方が②を選ぶことでしょう。

身体についてはどうでしょう。
もし、右側の引張りのようなものが慢性的になっているような場合、多くの人は①の方法を考えるのではないでしょうか。
「腰を前に押し出している」と指摘されたり、気づいたりしたときに、力で直そうとしていませんか。
「腰を前に押し出している」のは、身体の後ろ側にある筋肉が慢性的に引っ張っているからです。
それをやめることで、姿勢の変化を起こす必要があります。

また、身体全体はゴム風船のように、各部がゴムで繋がったような構造を持っているため、身体のどこかの「引っ張り(=緊張)」を取ると、その部分だけでなく他にも良い影響がでます。

自分の習慣になっている緊張に気づいて、それをやめてみてください。

身体は全体として考える必要がある

胴体が後ろに傾いている人(左端の写真)が真っ直ぐになると、頭が下を向いた姿勢(中央の写真)になり、とても不自然になります。

このときには、頭の青矢印の回転とともに、オレンジの動きが起こる必要があるのですが、普通は首の周りの柔軟性がないために、すぐに変えることは困難です、

そのため普通は、顔をいつものように前を向かせようとして、胴体は前の後傾に戻ります。

 

 

 

 

ある部分の変化は、他の部分の変化と関係が深いことを頭に入れておいてください。

姿勢を自分がしていることとの関連で考える

「立つ」ながら、次の2つのシーンを思い浮かべてみてください。

①何か失敗をやって、これからひどく怒られるために、部屋の前で立って入室を待っている。

 

 

 

 

②恋人に会うため、またはとても楽しみなコンサートに行くために電車を待って立っている。

 

 

 

身体はどのように反応し、立ち方はどうなったでしょうか。呼吸はどうでしょうか。

思いを変えただけで、身体が変わることを体験できたことでしょう。

実生活では、必ず立っているときに何か考え、何かをしています。
「立つ姿勢を気にしながら、立つ」ということは、とても特殊で、それだけを考えると身体は自由になりません。

日常生活で行っていることを取り上げて、「自分の使い方」を改善することで、自分の姿勢を善くしていって下さい。

アレクサンダー・テクニークを使う

アレクサンダーテクニークは、今まで述べたようなことを考えながら、「自分の使い方」を徐々に改善していきます。

3冊目の著書「自分の使い方」で、アレクサンダーは、人の「心」と「身体」は、2つの別のものではなく、分けられない「統一体」であることを知った、と書いています。
もちろん、あるときには、身体的な要因が強いことでしょうし、別のときには心的な要因が強いこともあるでしょう。でも、多くの場合で、片方を変えることで、もう片方にも影響が出ます。

人は、とても複雑な構成をしていまがすが、頭と脊椎の関係性についての特性を使いながら、全体的な変化をもたらします。