前から宣言していた「マージョリー・バーストー(マージ)が何を教えたか(仮題)」のレクチャー準備をようやく始めました。

マージを知らない人のために紹介します。ジェレミー・チャンスが伝統的なアレクサンダー・テクニークの学校で教師として訓練を受けた後、1986年頃にマージに出会い、これこそ本当のアレクサンダー・ワークだと感激した先生です。ジェレミーはそのマージから学び続けて、それが今のBodyChanceにつながります。なのでBodyChanceはマージ流ということになります。
キャシー・マデンはマージの生徒の筆頭ともいえる人ですが、他にもアイリーン・トローバ―マンなどマージに学んだ多くの先生たちが過去にBodyChanceに教えに来ました。

マージは1899年生まれて、大学で社交ダンスを専門に学んだしばらく後に、1927年ロンドンのアレクサンダーの所に行き半年間個人レッスンを受けました。その後、アレクサンダーから誘いを受けて1931年から始まった教師養成コースで3年間学び、アレクサンダー教師になています。
1986年の第1回のコングレス(ニューヨークで行われました)でATの大先生たちが集まったときに、パトリック・マクドナルドが彼女にあいさつに行き、「あなたが一番優秀でしたね。」と言ったそうです。


マージョリー・バーストーと呼吸

マージの教え方を知る手始めにと、1990年末の冬の連続WSの初日のビデオをみました。
そこで驚いたのは、生徒にワークを行っている2時間の映像の中で、「呼吸メカニズム」と何度も口にしていたことです。個人に手でワークをしながら、繰り返し「呼吸メカニズムに影響を与える」というような言い方をしていました。

その「呼吸メカニズム」という言葉は、前回のブログで書いたアレクサンダー2冊目の「個人の建設的で意識的なコントロール」の呼吸の章のタイトルだったことを、覚えている方もいらっしゃるでしょう。

先に紹介した第1回コングレスでマージは、30分ほどのインタビューを受けています。そこでも呼吸のことを言っていて、胸を落とすジェスチャーをした後で、「こうするなら、わたしは自分の身体に圧力をかけていて、それがわたしの呼吸メカニズム全体の柔軟性に影響する。」と言ってます。それを呼吸だけの例でなく、「コンストラクティブ・シンキング(建設的に考えること)」の実生活の基本的な例として挙げていました。

これを見るとマージにとって、初期の頃のアレクサンダーが教えていたように、アレクサンダー・テクニークは呼吸と切っても切れないものだったようです。

ところが、現在のアレクサンダー・テクニークでは、多くの場合で呼吸は別もののように考えられているようです。

ペネロープ・イーストン

最近出版された本に、ペネロープ・イーストンの「アレクサンダー・テクニーク 統合的な動きの12の基本」という本があります。
前回のブログで紹介したATと呼吸の文献に、これも加えておきたいと思います。最新の科学の知見を使ってATを説明していて、呼吸に関しても、仕組みや、ATとの関係、呼吸のためのエクササイズなど多くのことが書いてあります。
(ペネロープ・イーストンは、BodyCahnceの今年のGWのZoomクラスで2回教えます。タイトルは「胸腰ファシア」ということで、通訳はわたしになりました。)
ペネロープの特徴は、彼女がいろいろな意味で伝説の教師マーガレット・ゴールディの晩年のレッスンを長期に受けていることです。この本の中にもゴールディのことがとても多く出てきます。

この中で、ペネロープは自分のそれまでの呼吸の体験を書いていますが、ATに関連したことでは
「わたしに最初にアレクサンダー・テクニークを教えた先生たちは、呼吸については全く触れませんでした。それは、トレーニング・コースに入っても同じでした。」
と言っています。なんと、彼女の悪い呼吸法を変えたのは、ベイツメソッドの90歳の先生だったそうです(彼女はペネロープに、「アレクサンダー教師は誰も呼吸について知らない」と言いました)。

アレクサンダー・テクニークと呼吸

この2つのことは、とても大きな問題に気づかせてくれます。

マージのようなアレクサンダーから直接指導を受けた第1世代の教師たちは、呼吸はATと切り離せないと思っていたのに、後の世代の先生たち(特にペネロープがトレーニングを受けた頃の多くの先生は)、全くATと呼吸とは関係ないと思っていたことです。
このギャップは、どうして生じたのでしょうか?
どこでアレクサンダー・テクニークは大きく変わってしまったのか、と思わざるをえません。

アレクサンダーが教えていたものと、今のATは、その目的とするものがそもそも異なるのでしょうか。

坂戸ワンデイWS

第5回の坂戸ワンデイは「呼吸」で、第6回は「声」です。
ビデオなども見ながらそのしくみを理解しますが、特に本来アレクサンダーが見ていた身体の観察をとりあげ、呼吸に実際の変化を作り出します。
http://yasuhiro-alex.jp/sakado_1day/
5月末に梅田でも行います。関西の方はこちら(http://yasuhiro-alex.jp/kansai-ws/)にご参加ください。

GWの坂戸ワークショップもまだ空きがあります。
予定が取れる方は、1日でもご参加下さい。http://yasuhiro-alex.jp/gw-alexanderws/