多くの人が、腕や脚を幾つかの塊として動かしています。老齢で動きの悪い人を見れば、特に脚が一つの機械部品のように塊に見えます。
これは、蟹のような甲殻類のイメージを持ってしまっているのでしょう。
若い人でも胴体の一部がそうなっている人がいます。肋骨の周りや下腹部にみなさんは動きがありますか?


身体は多くの層でできていて、それらがしなやかに滑って動く必要があるのですが、一度動かない習慣を作ってしまうと再び動かすには努力が必要です。
若いときは日常生活で起こる普通の動きでも各層の間の滑りが適切に起こり、身体各部は柔軟に動くのですが、動かない生活をしていると衰えてきて、長い年月の内にその動かない状態を当たり前に感じてしまうからです。

腕や手や指、脚や足なども、それを動かそうとするときは、覆っているファシア(腕全体や脚全体を覆っているファシアは「腱膜ファシア」と言います)や筋肉、さらにはそれが繋がる胴体のファシアと筋肉に力が伝わります。
途中で止めなければ、その力は身体全体に伝わり、身体は痛みが起こらずに効率的に動くのですが、もちろん多くの人はどこかで止めてしまっています。

また、筋肉は動きやすい筋肉とそれほどでないものがあるようです(もちろんそれは使い方によって変わるので個人差が大きいですが)。
例えば、骨盤の外側から膝の内側に向かって伸びる「縫工筋(ほうこうきん)」という筋肉は、その筋肉の周りに鞘があって、その中で筋肉がスムーズに滑って動けるようになっています。(ちなみに縫工筋は、「膝」と「股関節」の2つの関節の上を通る、人の身体で最も長い筋肉で、脚のスムーズな動きに重要です)。

これらの滑りの構造に対して、「安定させたい」とか「頑張る」という考えから余計な力を加えてしまうと、その動きが悪くなることは明らかです。
わたしたちは、ブレーキをかけながらアクセルを踏むように身体を動かすことが多いのですが、普通に行う頑張りは、ブレーキをさらにかけることに繋がります。

ファシアを加えた身体構造と、力の流れがあること、それに滑りが伴うこと、を知ることは身体観を変えてくれます。
身体イメージが変れば、「心」と「身体」が別でなく一つのものとして働いている「わたし」の動きは、当然変化します。
いろいろ努力をしても「しなやか」な身体にならない、何かの動きがスムーズにならない、と思っている人に役立つことでしょう。

ステッコの「ファシア系の機能解剖アトラス」は、大版で実際の写真が多く、知識だけではない実用的な内容も学べる本です。
この本を学ぶレクチャーを企画しました。時間をかけてゆっくりとファシアの知識を自分のものにして役立てたい、と思う方はぜひご参加ください。
詳細については下記ページをご覧ください。
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前期第1回~第4回の実施日を次のように決めました。
第1回 序文・1章 6月30日
第2回 2章 7月28日
第3回 3章 8月25日
第4回 4章 9月28日
   (時間は午後8:00~9:30)

申込締め切りは6月6日(日)です。

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