腕の使い方についてですが、クラスでいつもやっているイスから立ち上がる動きを最初に復習します。

イスから立ち上がって歩き出す

イスから立ちあがったり座ったりする動きは誰もが行うものですが、そこにはその人がどの動きでも行う緊張が現れています。
そのためアレクサンダーは、晩年はこの動きだけを使ってレッスンを行いました。
ある人の何かの動きを変えることができれば、当然他の動きも変わって来るからです。

それは、今回のテーマの腕についても言えることで、腕を使うときの身体の使い方は、イスでの動きと共通しています。

朝日カルチャーのクラスでは、最初にいつもイスから立ち上がって歩きだしてもらいます。
それは、この単純な動きにいつも注意を払い続けることが、日々の生活で自分の動きについて考える良い練習になるからです。

日常生活でアレクサンダー・テクニークを使おうと思っても、普通は思い出すことを忘れて「何も考えずに」立ったり座ったりしてしまい、動作の後で考えなかったことを思い出すことでしょう。

思い出して使うことは、簡単ではないことが分かります。
これは、自分を変える上で重要な部分なのです。
みなさんは1日に何回くらい動作の前に、アレクサンダーのディレクション「頭が動いて、身体全体がついていく...」を思い出せるでしょうか。

前にも何度も書いていますが、この動きについて取り組み続けて下さい。

次のような感覚が入ってきたら(探しにいくのではなく)、気づけるようになると良いと思います。
・胴体のどこか、特に肋骨の外側を固めていないか。
・お腹に力を入れたりしていないか。
・脚に急な力を加えたりしていないか。

これらは余計な力が入っていることですが、逆に自分の身体で動こうとしない部分が見つかるかも知れません。
イスから立とうとしているのに、お尻やお腹や脚がその気になってくれないような状態です。
(脳卒中で倒れた人などは、身体全体がそのような感じがします。)
それを感じたら、どうしたらそれらをその気にさせられるかを、工夫してみて下さい。

 

腕を使う動き

わたしたちは始終腕や手を使っていますが、その使い方は人によってさまざまです。
・何かを持ち上げる。
・歯磨きをする。
・楽器の演奏で楽器を手で持つ。
・雨の日に傘を持つ。
・字を書く
などで、他の人と違うと思ったことはありませんか。
ときどき他の人がどうしているかを観察してみてください。
人によって動きはとても違っていて、 多くの人は必要以上の力を使って、自分を疲れさせています。

(1)タオルを絞る動き

クラスではタオルを絞る動きを行ってもらいました。
指や手に力を入れて、タオルをかなりきつく絞ってみます。
これを行うと、多くの人は力を入れて腕や胴体を固めてしまうので、肩や腕を大きく動かすことはできません。

そのような人は、特に首を固めて頭を下に下げて、身体全体を小さくさせ、特に肘を内側に引き込みながら、それを行っていることが見て取れます。
もちろん普通はそれしか知らないので、そのような状態を当然だと思っています。

実は、腕と手に力をいれたままで、手首、肘、肩の関節をかなり動かすことができます。
どうぞ、タオルで自分で試してみて下さい。

この動きにアレクサンダー・テクニ-クを使うときは、
「頭が身体から離れていき、そうすることで身体全体がそれについて行き、」
と自分に言ってから、それを自分に続けることで、
自分の身体を下方向に圧力を加えてしまういつものやり方を防止し、
「そうすることで、
上腕が外に向かいながら、
肘は下方向に向かうように、
手首はやや内側方向で絞る回転の方向に向かいながら
タオルを絞る」
ようにします。

うまく行うと、腕のどこにも大きな力を加えずに、タオルを強く絞ることができます。

これを体験した参加者には、タオルをきつく絞る動きに、身体全体にはそれほどの力が要らないことを分かってもらいました。
とても驚いていた方いらっしゃいました。

ぜひ、ときどき試してみて下さい。
何度か行うことで、腕の動きが変わることに気づくでしょう。
行なっていることだけに集中せずに、意識が狭くなって内側に向かって力が入ることがないように、外側に何があるか見続けることが役に立ちます。

これが分かると、日常生活の腕の動きで必要以上に力を入れ過ぎていることが理解できます。
それは何かをしっかり掴もうとするときに起きているかも知れないし、特に多くの人が楽器の演奏をするときに起きていることです。

次回は、ペットボトルなど、何かを持ち上げる動きを取り上げます。

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