少し前になりますが、キャシー先生の新しい本「Galvanizing Perfromance(パフォーマンスを活性化する)」が
今年(2017年)の8月21日に出版されています。
キャシーと共著者のKathleen Juhlの編集となっていますが、キャシーの考え方がこの本の骨格になっている
ことは容易に見て取れます。
アレクサンダー・テクニークを使ってパーフォミングアートを教えることに関して、いろいろな
アレクサンダー教師の 独自の指導法を紹介するもので、13の寄稿が載っています。
寄稿者の中には日本でも教えたことがあるサラ・バーカーや、デビ・アダムスなどがいます。
336ページとやや厚いですが、キャシーの最初の本に比べると、文字が大きくスペースもあり、
英文もそれほど難しくありません。
英語が苦手な方も、この本でキャシーの直接の言葉に触れることは、とても役立つと思います。
Amazonで手に入りますので、ぜひ読んでみて下さい。
キャシー自身は、次の3つを書いています。
(1)イントロダクション(16ページ)
(2)ワシントン演劇大学での5日間初級クラスのレポート(43ページ)
3時間×5日間のクラスの内容が詳しく記されています。
(3)アレクサンダー・テクニークの先生が他の分野の先生と共同で教える(15ページ)
キャシーがワシントン演劇大学で、歌などの他の分野の先生と1つのクラスをどのように教えたかについて書いています。
どれも実際的な示唆に富むものですが、キャシーのクラスに出たことのある人に役立ちそうな部分を紹介します。
①アレクサンダー・テクニークとは何かについて
■「「願い」が無ければ、アレクサンダー・テクニークは表現する手段を持てません。
なぜなら、単に「どうやって[how]」に関するものなので、ATには「何 [what](何か行うもの)」が必要なのです。(P.14)
これはレッスンに来る生徒の役割について、キャシーがいつも言っていることですが、簡潔な文で示されています。
②キャシーの方法と、F.M.アレクサンダーの教え方の対応
キャシーの教え方と、伝統的な教え方はとても異なって見えるので、ここに書いてあることはとても役に立ちます。
キャシーは、彼女の方法は、F.M.アレクサンダーが著書の「自分の使い方」の第1章に書いているプロセスだと
述べていて、 次のように対応づけています(p.221)。
1)(何かを)やりたいと望む。
2)それに関して何かに気づく。
(すなわち、その質に対して、気がかりだったり、心配があったりする。)
3)探求しようと決める。
(F.M.の言葉では、「選択の自由」)
4)情報を集める。
(F.M.の言葉では、「自分の今の「使い方」の状態を分析する」)
5)情報からプランを作る。
(F.M.の言葉では、「ミーンズ・ウェアバイ」を論理的に考える)
6)自分がやりたいことにそのプランを使う。
(F.M.の言葉では、ミーンズ・ウェアバイを実行するために、「ディレクション」を使う)
7)自分に選択の自由があることを、いつも知っておく。
③インヒビション(抑制)について
キャシーがF.M.アレクサンダーの用語の多くを使わないのは、
「「実際に起こってもらいたこと」を述べる言葉よりも、明確でないと思う」
からで、
特に、「インヒビション」は普通は使わないが、伝統的なアレクサンダー教師に教えるときには、
使うことがあり、そのときは、
「「インヒビション」を「最後の結果」として説明します。
インヒビションは、古い考えが、新しい考えによって置き換わったときに起こります。」
のだそうです(p.221)。
マージョリー・バーストーがWSで教えているときに
「なぜインヒビションについて教えないのか」
と問われたときに、
「わたしは、インヒビションしか教えていない」
と答えたことに通じます。