(4)小テスト、資格試験

みなさんは授業で、小テストを使っていますか。
学校や科目の特性によって小テストが適当かどうかは異なることでしょう。
自己学習の習慣が少ない生徒には、漢字や、計算練習、英単語や英文の暗記などは、生徒に定着を図るために役に立ちます。
勉強をしていない生徒は、小テストを始めからあきらめてしまうこともあるので、雰囲気作りは必要です。

先生になって2年目に、わたしは「工業数理」という1年生の科目を担当しました。
当時の狭山工業高校の電子機械科では、6月まではこの科目を使って
「計算技術検定」(電卓で、いろいろな数式を素早く正確に計算できる能力の検定)、
の練習を行い、その後の1月までは
「情報技術検定」(2進数などのコンピュータを学ぶ基礎的な知識と、簡単なプログラム作成の能力)
に向けて取り組ませていました。

入学したばかりの生徒に、電卓の計算練習をさせることは、なんと楽だったことでしょう。
少し生徒に説明すれば、後は時間を計りながら過去問を生徒に練習させるだけです。
前年に3年生に苦労して行った「原動機」の3年生の授業とは、全く違います。

入学したばかりは、どの生徒もやる気を持っているし、検定試験の練習は目的がはっきりしています。
生徒が自分の力の向上を点数で実感し、「合格」という結果も出せます。
もちろん落ちこぼれそうな生徒がでるので、その生徒に補習をやる必要はありますが、それは苦痛と言うようなものではありません。
点数が低い生徒を時間をかけて相手をすることで、できないポイントを理解できるし、生徒からの信頼感も得られるので、授業はやりやすくなります

でも、このような授業ができる科目は限られているし、そのような内容が学習の全てでもありません。、
小テストには、検定試験と同じような面があると思います。
良い状況設定と、生徒への意欲づけが必要です。
その点に注意しながら、小テストを「どのような場面」で、「どう使うか」をいろいろ試してきました。

多くの場合で、年度初めの基礎的な事項の学習には小テストを使い、内容が応用的になってくると、課題解決的な問題に取り組ませるような授業にしました。
例えば、「電気」について教えるときには、前半は、電流、電圧、抵抗などの単位の換算や、回路の計算について小テストで練習させます。
そして後半は、実際の回路を作ったり、応用を考える課題を与えるなどです(前回書いた科目のストーリーとも関連します)。

また、最初から小テストである程度の点数を要求することは、先生の側の生徒に対する要求の高さを、具体的に示すことになります。
例を一つ示しましょう。

わたしが最後に行ったプログラムの授業で、小テストを次のように使いました。
①授業を3回使って、同じような小テストを3回行う。
②1回でも8割以上取れれば合格。
③3回やっても、合格しない者は、放課後の補習を受ける。
④補習の最初に小テストを行い、それで8割取れれば帰って良い。
⑤8割できなければ、できなかった所について理解するまでの補習を受ける。
⑥合格するまで、この補習を続ける。
ちなみに、この小テストは、クイズ的な穴埋め的な問題ではなく、問題文の後の白紙の解答欄に、指定された処理について「流れ図」か「プログラムの全体」を書くというものした。

【補足】
・国家試験への挑戦
検定試験を使って、生徒に勉強意欲を持たせる手法は有効でした。
その延長で、先生として3年目になったわたしは、新設の電子機械科2年生80人に「情報処理技術者試験」という国家試験を目指すように、授業を行いました。
かなり難しい試験なので、後で考えるとかなり無謀でした。
若気の至りでしたが、それができるとわたしが信じていたので、生徒もある程度ついてきました。
卒業までに1割弱の生徒が国家試験に通ったのは、かなり良い合格率だったと思います。

「試験」を目標設定にしたのは、わたしがそのように勉強してきたからだと思います。
高専3年のときから始めて、浪人の1年を含めた4年間を、大学の編入試験のために勉強しました。
その慣れたパターンは、生徒に伝えやすかったからです。

その勉強への考え方は徐々に変わっていったのですが、それについては後でふれます。

・専門高校は、このような検定や、資格試験の学習を武器にして生徒を伸ばしてきました。
工業高校の電気科は、建物の電気配線をするために必須な「電気工事士」という資格の取得を目指しています。

商業科は、簿記とソロバンの資格がありました。
当時は、会社の会計処理には人手が多く必要だったので、その資格は評価され、就職にも有利に働き、生徒の自信にもなっていました。
残念ながら現在は、コンピュータ処理で人手がいらなくなったので、生徒全員を3年間引っ張る原動力ではなくなっています。

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