マージョリー・バーストーは1990年頃のWSのビデオで、参加者の肩のあたりに手を置きながら、そこは「unknown area (知られていない場所)」だと言ったし、アナトミー・トレインのトーマス・マイヤーズは、彼の先生のロルフィングのアイダ・ロルフが、「鎖骨は水平になっている方が良い。」と言っていた、とレクチャーで述べていました。

まさに腕をどう使うかは、この部分に関係しています。
多くの人が腕を重くしているので、肋骨をいつも圧迫していて、それが腰を前に出して呼吸が浅くなる原因になっています。
肩は、「腕の骨(上腕骨)」と「肩甲骨」と、その「肩甲骨」を身体の前面にある「胸骨」に繋いでいる「鎖骨」の3つで構成されています。
その3つが作る一つのユニットは、「鎖骨」と「胸骨」が作る関節でかなり自由に動くので、いわゆる「肩」はとてもいろいろな位置に置けてしまいます。
みなさんの肩のデフォルトの位置は、どのくらいの高さで、どのくらいの幅がありますか。
自分の「鎖骨の傾き」を観察すると良いかもしれません。
「鎖骨」は水平ですか?
多くの人が自分の肩の位置はそれほど変わらないと思っていますが、実際はそうではなくて、「なで肩」と思っていた人も変わるかも知れません。
また、みなさんにとって肩は良く動くものですか?
多くの人のイメージは、「肩が肋骨の上で浮かんでいる」ではなくて、「ほとんど肋骨にくっついている」というものでしょう。
そのため、特に年齢を重ねると、その慣れた位置から大きく動けなくなります。
と書きながら、小学生はどうだろうとYoutubeで小学生が体操するところを見てみましたが、低学年はともかく、小学生の高学年でもかなり動かなくなっている、と感じました。
(スマホやゲーム機世代なので、私の時代よりも、彼らはそれが早く起きるのかも知れません。)
 この部分は、障害をもたらすことがあります。
私は「50肩」を経験しました。
クラシックギターの練習で、そのときに弾いていた曲の負担のある左手の位置を作るのに、腕を無理に引き下げていたからだと思っています(そのとき見てもらった医者は、そんなことはないと言っていましたが...)。
めったにない発表会のために、直前にその曲をかなり練習していたし、治りかけたときに、その曲を弾くと、また悪化したからです。
(ちなみに、「50肩」のひどい症状は発表会の後で起こりました。もちろん発表会の後はそれほど弾いていないので、そこで悪化はさせていないはずです。時間をかけて蓄積したものが、少し後になって症状として現れて、数週間かけてその痛みが徐々にひどくなっていきました。
同じようなことを、脚の痛みでも経験しています。それは、ジョギングによる負担でした。身体は、節がいな反応をします。)

この肩回りについては、私は自分のユースが改善してきて「感覚認識」が上がって来たことで、かなり改善したと思っています(それには、その3つが作るユニットだけでなく、「脊椎」「肋骨」「胸骨」が柔軟に動けるようになることも、関係します)。
一つの大きな出来事は、ボールを普通に投げれるようになったことです。
もう何十年も、何かを投げる動きをすると肩回りがツリそうで、怖くてその動きは行わないようにしていました。
それが、ある日気づいたら、その抵抗が全くなくなっていたのです。
そのようなことを体験しながら、特にこの辺りについては「張力ネットワーク」という表現が本当に適切だと思っています。
可動性をもってどこにでも動けるように、「ファシア」と筋肉が肩を吊り下げている構造です。
それは、「蜘蛛の巣」のように(気持ちの悪いと言う人は、朝露でキラキラしている美しい「蜘蛛の巣」を想像してください)、どこかを少し動かせば、他の全体が影響を受けるように全体が弾性を持ってつながっていまるし、必要な力を部分ではなく、全体で作り出します。
この「張力ネットワーク」には、働き過ぎの部分があったり、怠けすぎで脱力している部分があってはいけません。




1つ実際に行える実験をあげましょう。
字を書いているときに、誰かに後ろから両腕を持ち上げてもらってみて下さい。
どのくらい簡単に持ち上がりますか。
2人1組になって前後になり、後ろの人が両腕を持ち上げることを、ときどきクラスで行ってもらっています(そのときは字を書くわけではありません)。
前の人は、一生懸命抵抗しなくてもほんの少し「腕が上がらない」と思うだけで、後ろの人が「全く上がらない」と感じることに、誰もが驚きます。
これは字を書くだけでなく、楽器を演奏する人にも使えるので、ぜひパートナーを見つけて試してみて下さい。
後ろの人の助けを借りながら、作業を行うときに腕を重くしないようにできれば、それがどのような感覚かが分り自分一人でもできるようになります。
(もちろん、作業を行わなくても、いつも腕が重たい人もたくさんいます。)
タイトルに「腕を重くしない」という「Yesプラン」に反することを書きましたが、それは、腕を使うときに、「自分に指示する」言葉ではありません。
「重くしようとする何かが起きたときに、気づけるようにする」という全体的な指示です。
それにより、自分の感覚認識を上げることができます。
第9回の坂戸ワンデイ・ワークショップ「字を書くときの意識と動きを変える」では、この「腕の重さ」についても扱います。それを無くすことは、腕や手や指の動きの基本です。
参加希望の方は、http://yasuhiro-alex.jp/sakado_1day/ からお申し込みください。
各個人へのワークの時間を多く取りますので、定員は6名です。