アレクサンダー自身の著書と映像
F.M.アレクサンダーが書いた本は4冊あります。
他に、彼の書いた記事やパンフレットなどをまとめた本が出版されているので、彼自身の著作は5冊と考えることができます。
また、彼が映っているDVDもあり、それらは全てMouritzから購入することができます。
彼の文章は、1つの英文が4,5行と長く、それだけでも決して読みやすいとは言えません。
その上アレクサンダー・テクニークの特性から、普通に考えられる知識とは異なる質の内容なので、理解するまでに時間がかかります。
多くの人が、最初に読んだときはとても大変に感じたのに、後からもう一度読んだら楽に読めるようになったと言います。。
どのくらいアレクサンダーの本を楽に読めるかは、アレクサンダー・テクニークの理解のバロメータです。
アレクサンダーの著書の役割
アレクサンダー自身は、彼の高額な個人レッスンを受ける前に、4冊の著書のうちから必ず1冊読むように言っていました。
それが時間の節約になるからという意図でした。(実際に読んだ人は少なかったようですが)
アレクサンダーから訓練を受けて、手の使い方について定評のあったペギー・ウィリアムズは、次のように言っています。
「アレクサンダーの手は信じられないほどでした。
なんでも知覚し、感じ取り、知っているようでした。
生徒たちの中には、手がまるでそれ自身の生命を持っているかのように感じている者もいました。
ところが、FM(アレクサンダーのこと)は、自分の額を人差し指でトントンと叩きこう言っていたものです。
『ここから来ているんだよ。』
また『もっと知りたければ、私の本を読みなさい。』とも、私たちに何度も言っていました。」
アレクサンダーの著書への生徒からの評価
興味深いことは、マージョリー・バーローを始めとして、何人かの有力な先生たちが、「意識的なコントロール」という人間の新しい可能性に魅せられたことです。
それを理解しようとすることが、彼らがテクニークを学ぶ原動力になっていました。
アレクサンダーが考えていたその壮大なビジョンは、彼の本を読むことによってのみ理解できます。
第一世代(アレクサンダーから直接教えを受けた人たちを言います)の有名な教師であるマージョリー・バーストー、マージョリー・バーロー、ウォルター・キャリントンらは、アレクサンダー自身の著書を読むことを強く勧めていました。
バーローやキャリントンは、教師養成コースの中で著書を学ぶ時間を設けています。
特に、3冊目の本「自分の使い方」の第1章「テクニークの進化」(一部訳あり)はとても重要だと誰もが考えています。
アレクサンダーのそれぞれれの著書
アレクサンダーの5冊の本について次に概要を示します。
一部、訳を載せましたので、ぜひ読んでみてください。
(1) 「Man’s supreme inheritance 人が受け継いでいる最高のもの」 略称MSI 250ページ
1910年(アレクサンダーは41歳)に出版されました。彼はその後1911年に「補遺」を、1912年には「意識的なコントロール」を出版しています。
1918年には、それらをまとめ直したものを作っていて、現在の版はその形です。
世界的に有名な哲学者のジョン・デューイは、このときに序文を書きました。
彼の最初の著作であるこの本は、とても野心的です。
自分が作ったテクニークが、人間の進歩にいかに有効かについての彼の確信が書かれていて、読む人に未来に対する希望を抱かせ、アメリカではかなり売れました。
立つこと、歩くことや、呼吸についての具体的な記述もあります。
アレクサンダーが主張し続けた「意識的コントロール」ということについて、彼がなぜ必要と考えたかについて、とてもよくわかります。
(2)「Constructive Conscious Control of the Individual 個人の建設的で意識的なコントロール」 略書CCC またはCCCI Mouritz 239ページ
1923年(アレクサンダー54歳)に出版されたアレクサンダーの2冊目の本です。
テクニークの全体を体系的にまとめたもので、彼は4冊の本の中で、この本を最も重要と考えていました。
この本の執筆にあたっては、ジョン・デューイが大きく関わっています。
当時、1年のうち半分をアメリカに滞在することにしていたアレクサンダーは、その内容をデューイに詳細に確認してもらっているからです。
「ハンズ オン バック オブ ザ チェア」の詳しい記述もあります。アレクサンダーは、「ハンズ オン バック オブ ザチェア」を特許にしようと思ったのですが、それができなかったので、この本に詳細に書くことにより、著作権で守られるようにしたそうです。
第3部には、学習をするときの「模倣」と「集中」について、一般的な考え方とはかなり異なったアレクサンダーの考え方が示されています。何かを学ぶときに役に立つことでしょう。
(訳 ==> 2章「模倣」、3章「集中と指示を出し続けること」)
(3)「The Use of the Self 自分の使い方」 略称UOS Orion 124ページ
1932年(アレクサンダー63歳)に出版された3冊目の本です。
第1章の「テクニークの進化(Evolution of a Techinique 略称EOT)」は、アレクサンダーがどのようにテクニークを見出していったかを書いています。
「インヒビション」や「ディレクション」など、アレクサンダー・テクニークでの基本的な用語の始まりを知ることができます。
彼は、この内容があれば、もし直接の後継者がいなくなっても、誰かがその内容を再発見してくれるとも思っていました。
この本の出版前年の1931年に、アレクサンダーは、テクニークを教えるための教師養成コースを作っています。
彼はこの本で自分が辿ってきた過程を示すことで、生徒たちの学びが進むことを期待しました。
(訳 ==> 第1章「テクニークの進化」)
(4)「The Universal Constant in Living 生きている上で変わらないこと」 略称UCL Mouritz 230ページ(注釈を除く)
1941年(アレクサンダー72歳)出版のアレクサンダーの最後の著作です。
アレクサンダーは、この本の序文に「前著「自分の使い方」を書き終えたとき、それまでの2冊と合わせて3冊の本があることで十分だと思ったが、誤解がまだあり、理解が充分にされていないことが分かったのでこの本を書くことにした。」
と述べています。
また「自分の使い方」の出版の後、テクニークに科学的説明を与える生物学や生理学の分野の発見があった」ので、それについても触れています。
それまでの本と異なり、テクニークの具体的な記述は余りありませんが、アレクサンダー・テクニークがなぜ必要かをさまざまな人間の特性から考えさせてくれます。
(訳 ==> 第1章「使い方は良くも悪くもいつも影響している」)
(5)「Articles and Lectures 記事と講義」 Mouirtz 372ページ
オーストラリアで教え始めたときからの彼の宣伝用パンフレットや、講義の記録、オーストラリア時代の自伝の草稿です。
アレクサンダーは、初期の頃「呼吸の人 breathing man」と呼ばれ、声と呼吸の改善をうたい文句に宣伝していました。
そのころ教えていた内容をうかがい知ることができます。
彼が使っていた言葉(用語)の変遷もわかります。
(6)DVD 「F.M.Alexander 1949-1950」 Mouritz
アレクサンダー80歳のときの映像。チェアワークの様子や、スクワット、ウィスパード・アーを行っている所を見ることができます。
彼は1947年末に、名誉棄損裁判の心労などから2度の脳卒中を起こしていますが、回復している様子がわかります。
マージョリー・バーストーが録画した、教師養成コース開始当初のアレクサンダーや生徒の映像も含まれています。
どれも音がないので、アレクサンダーの声が聴けないのが残念なところです。
アレクサンダーの本を学ぶコース
BodyChanceでは、ヤスヒロがディレクターとして運営している4冊の本を学ぶオンラインコースがあります。
誰もが受講できるコースで、プロコースに入学する前からプロコースの単位として認定されます。
春期(4月~5月中旬申込み)と秋期(9月~10月中旬申込み)があります。
アレクサンダーの本は、小説というよりは、数学の教科書のようにじっくり自分で証明を行いながら
読む必要があるものです。
少しずつ読みながら、内容を自分なりに考えていくブックコースは、一人ではできない読み方を可能にします。
個人にもよりますが、決して簡単なコースではありません。
それだけにじっくり取り組んだら得るものがあります。
(コースについての質問等がありましたら、info@yasuhiro-alex.jpまでメールをください)
アレクサンダー著作のヤスヒロ訳
簡易製本版を購入することができます。
(MSI、UOS,CCCI。UCLは現在翻訳中です)
興味のある方は、info@yasuhiro-alex.jpまでお問い合わせください。