「人が受け継いでいる最高のもの」MSIの主題は「意識的なコントロール」です。

簡単に言えば、何かを行おうとするときに、いつものようにやみくもに自分を「頑張らせる」ことをしないで(またはその逆に、ある意味で怠惰に、身体の他の部分と切り離して身体の一部だけ使おうとしないで)、身体を効率的に使える方法を思い出して(意識的になって)、それを実行に移すことです。

「意識的なコントロール」がどのような向上をもたらすか

それがどんな効果をもたらすのでしょうか。
アレクンサンダーは「意識的なコントロール」が、ただ動きが良くなったり人を健康にしてくれるだけでなく、人が進歩をするうえでの「到達すべき次元」で、とても素晴らしいものだという壮大なビジョンを描いていました。
MSIのパート1の第1章に、
「人が持つ身体的、心的、精神的な潜在能力の高さは、今の人の知性の理解を超えています...今までの感覚による潜在意識のガイダンスでは、その高い能力を完全にコントロールするという『受け継いでいる最高のもの』に至らせてくれません。」(原文を少し改変しています)
と書いています。

人類全体を考えることは大きすぎるにしても、わたしたちは今の自分より数段レベルアップした自分を期待できるでしょう。

では、その「受け継いでいる最高のもの」といえる「意識的なコントロール」の最初には何をすれば良いのでしょうか。

「意識的なコントロール」はまずストップすること

アレクサンダーは、すぐに行動を起こそうとする自分をまずストップすることだ、と言います(それには、「正しい行動をとらなくてはならない」と思たり、「何かの心配をしてしまう」ことも含まれます)。

そんなことは考えたことが無かった、と普通の人は思うでしょう。だからこれは新しくて、アレクサンダーが言うように、今まで行われてきた教育に反したものです。
また、多くの人にとって「意識的なコントロール」の最初が、「ストップして何もしない」ということはとてもその言葉のイメージと異なるのではないでしょうか。コントロールすることは、何かを強く指示して、無理やり何かを行わせるイメージがあるからです。
しかし、この点がアレクサンダーの「意識的なコントロール」が新しい所です。
(これを伝えるために、アレクサンダーは「ミーンズ・ウェアバイ」―「エンド・ゲイニング」、「ノン・ドゥイング」―「ドゥイング」という用語を使いました。)

前回紹介したデューイも、晩年に、「レッスンから得た最大の恩恵は、活動する前に止まって考えることができるようになったことだ。」と述べたそうです。それが、彼の姿勢と健康を向上させてくれました。

またアレクサンダーは、4冊目の「いつも人に影響するもの(UCL)」を第二次大戦後に改訂した際に、戦争という大きな悲劇について考えて、「Knowing how to stop (止まることを知る)」という章を追加しました。

そのくらい「止まる」ことは大きなことで、「意識的に」それを行おうとしなければ、感覚に流されてしまいます。

ほとんどの人にとっては、「止まる」ことがどういうことかさえ認識が困難なのは、それがその人の筋肉活動と脳の活動と関係が深いからです。

それを知り、そうできるようになるために時間がかかりますが、大きな変革は自分の外側の環境ではなく、自分の内側で起こるものと考えれば、時間がかかることは仕方がないのでしょう。

MSIを扱うGWの坂戸連続WSとMSIの販売

坂戸で5月2日から行うGW連続WSでは、このMSIを取り上げます。
じっくり読む時間を取るわけではありませんが、WSのベースとして簡単に触れていくので、参加者はMSIを読んで質問などを考えていてください。
(5月2日と4日にまだ1名ずつ空きがあります。空きがあれば直前まで受け付けていますので、お申込み下さい。http://yasuhiro-alex.jp/gw-alexanderws/ 残席があるかは、http://yasuhiro-alex.jp/で確認して下さい。)


また、参加者以外の方もこの機会にMSIを読んでみませんか(http://yasuhiro-alex.jp/products/)。
じっくり読むと具体的なヒントが見つかります。

この本は、アレクサンダーの1冊目の本として、全くテクニークのことを知らない読者を想定して書いているので、その点でも取り組みやすいと思います。