有名なオルダス・ハクスリーが、視力を良くすることについて書いた「見るときのアート [Art of seeing]」の本が良いと思ったので、4、5年くらい前に下訳を8割ほど作りました。
それを完成させるためと、自分の老眼対策の学び直しを兼ねて、いま訳に取り組んでいるところです。

それと同時に、その本の元にもなっている眼の改善のための「ベイツ・メソッド」も知っておく必要があると思い、ベイツの本「メガネなしに視力を回復するベイツ・メソッド [The Bates Method for Better Eyesight Without Glasses]」も一緒に訳すことにしました(別の本の訳(「ベイツ・メソッド: 眼科学会が今も無視を続ける目の真実について」は、アマゾンでキンドル版を250円で購入できるようです。少し違いはありますが、ほとんど同じ内容のようです。自分の訳を作るのは、専門書は良い訳でない場合が多く、他の人の訳だと頭が混乱するからです。自分で訳せば、じっくり考えて頭に残すことができるし、気に入らなければ訳を変更できます。私の趣味の翻訳も10年以上続けてきたことで、そこそこのレベルにはなってきました。)

そのベイツの本が言っているのは、人の眼の障害はすべて緊張が作り出していることです。彼は通常の考え方と異なり、眼の遠近調整は水晶体(レンズ)ではなく、眼球の形が変わることで行っていると考えていました(1つの眼には上下左右の4つの筋肉に加えて、斜め方向の2つの筋肉があり、合計6つの筋肉があります)。老齢になると水晶体が石のように固くなると言われているのですから、素人考えでも、水晶体の調整だけではないとは感じます。それらの筋肉の働きに緊張があり、それが伴う習慣化した悪い使い方が起こることで、見え方が悪くなる、とベイツは説明しています。

ベイツの理論の信憑性はともかく、何を行うときも緊張や一生懸命に行うことが作業に悪く作用することは、アレクサンダー・テクニークも言っていることなので、眼についての緊張を取り去ることは重要です。

字を書くときにも、指の緊張は眼の緊張を引き起こすし、逆に、眼の緊張は指の緊張を引き起こします。
試しにテーブルに紙を置いて座り、
1)ペンを持ち
2)一度遠くを見てから
3)字を書くつもりで視線をゆっくりとその紙に向け
4)紙にペンを近づけて行ってみて下さい。
眼が何か特別なことをやっていませんか。
くっきりと見えるように、凝視はしていませんか。

もちろん、眼は近くを見るときに焦点を変える必要があるので、遠くから近くに視点を動かすときに筋肉が働く必要はあります。
問題をそれを緊張――つまり筋肉の努力――で行ってしまうことです。
身体の動きを、努力や余計な緊張なしで起こすことは、眼でもアレクサンダー・テクニークでも重要なことです。

F.M.アレクサンダーは、見ることについても言っていて、彼は「眼には、自分で見るようにさせることだ」(無理に見させようとしない、という意味です)と言っていました。



「見るときのアート」を書いた、当時、知の巨人と言われていたオルダス・ハクスリーは、アレクサンダーからレッスンを受けてとても感銘を受けていて、彼のことを自分の本の幾つかで取り上げています。
「見るためのアート」の本にも、アレクサンダー・テクニークを紹介しています。


2023年1月8日(日)の第9回の坂戸ワンデイ・ワークショップ「字を書くときの意識と動きを変える」では、眼の使い方も交えながら、参加者一人一人にワークします。
 
参加希望の方は、こちら からお申し込みください。
各個人へのワークの時間を多く取りますので、定員は6名です。