先日、世界的なアレクサンダー教師トミー・トンプソン先生のZoomクラスを見ていたときに、トミー以外のほとんどの人たちが、頭を引き下げながら話していることに気づきました。
(トミーの声がとても魅力的な要因の一つは、それをしないことにあるのでしょう)
ほとんど誰もが頭を引き下げながら話しているので、わたしたちはそれを異常と思わなくなっています。

アレクサンダー・テクニークと声

アレクサンダーは、「もし声の問題でなかったら、このテクニークを見つけることがなかっただろう。」、と言ったことがあったそうです。

しかし、最初に彼が1894年から1895年にかけてタスマニアとニュージーランドで公演を行いながら教えたときを除いて、テクニークを教える中で声をメインに教えることはなかったようです。

声を良くするためには、身体が変わる必要があるので、その方に重点をおいたからでしょう。
それでも1900年には、シドニーでATとは別に、演劇を目指す生徒たちを集め劇団を作って公演を行ったし、1931年からの第1期教師養成コースの3年目と4年目にはトレーニーたちに相当期間の訓練を積ませて大劇場でシェーククスピア劇を行っています。オーストラリアでもロンドンでも演目は「ヴェニスの商人」か「ハムレット」でした。

最初はアレクサンダーの助手を務め、後でリトル・スクールを始めた有名なアレクサンダー教師のアイリーニ・タスカーは、その教師養成コースでの演劇の練習にゲスト的に参加した(彼女はもちろんトレーニーではないので)ときのことをこう言っています。

アイリーニ・タスカーの声の体験

「わたしが立っていたときに、アレクサンダーは1、2分間ワークをしました。そして、わたしの頭の上に手を置き、彼がわたしのディレクションを保っている間に、文を話すようにと言ったのです。そのとき初めて、「活動の中で考える」の意味を知りました。話すという活動は、わたし全体の使い方の一部でした。「うまく話そう」とか「それに表現を加えよう」とか何も思わずに、その言葉の意味をわたしの声は表現していたのです。これはわたしにとって、最も価値ある思い出の一つです。」
(彼女の講演「コネクティング・リンクス」から)

タスカーが助手になってから、20年後の出来事だったことはとても興味深いことです。

第5回の坂戸ワンデイは「呼吸」で、第6回は「声」です。
ATの基礎と言える「呼吸」と「声」に関して、関係する身体の構造を知り、アレクサンダーが何を観察したかを見ていきながら、声と呼吸が本当にコーディネーションに左右されることを実体験します。

1日かけて行うことで、自分の「呼吸」と「声」の可能性に気付けることでしょう。
この内容は、5月末に梅田でも行います。関西の方はこちらにご参加ください。