みなさんは、自分の胴体についてどんなイメージを持っていますか。
腕や脚を動かすときに、胴体はその引張りを受けていろいろな所が動くでしょうか。
それとも、前回のブログで甲殻類に例えたように、ロボットのように一つのまとまった塊でしか動けなくなってしまっているでしょうか。

胴体を最も外の面から考えて行くと、まず皮膚と脂肪があり、その下に「表層ファシア」(強い膜のようなもの)があります。
その下にまた脂肪があるので、下にある筋肉面に対して滑って動けるようになっています(この構造により筋肉の部分に影響を与えずに、皮膚を動かすことができます)。
今回注目したいのは、その下に大きく分けて3つの「筋ファシア層」があることです。
「筋ファシア層」というのは、筋肉とその周りの関連するファシアを1つのまとまりとして考えるときの言い方で、大まかには関連する筋肉が作る1つの層と考えてください。

胴体では、この3つの「筋ファシア層」の間に滑りが起こる構造になっています。
つまり、最初に挙げた表層ファシアを含めると、4つの滑り面があることになります。
そのような滑り面があることを、自分のお腹や背中に想像できるでしょうか。
(わたしたちは誰もが多かれ少なかれ癖を持つので、胴体のどこかに滑りが起きないような動かし方をしています。長年それを続けるとそこが動くという感覚が消え失せます)。

腹直筋鞘と胸腰ファシア

もちろん、この「筋ファシア層」は胴体のどこでも自由に滑るというわけではなく、何か所か付着のある場所あり、胴体の区画分けを行っています。
また、関連する「筋ファシア層」が集まって、各筋肉間に起こっている力を調整する場所があります。
これが、身体前面では「「腹直筋鞘(しょう)」で、背中側では「胸腰(きょうよう)ファシア」と呼ばれる部分です。
この2つは、解剖学の本を見ると赤い筋肉に対して、白く描かれています。
筋肉のことを考えるときは、この2つを無視しがちですが、「筋―骨格―ファシア」系として身体の動きを考えるときには、胴体の要になる部分です。
この2つが、その周りの筋肉とファシアが作る3層構造の中継地点になっていて、そこが固まったり弛緩し続けて動かなくなると、力の伝達が無くなるため、しなやかな動きができなくなり腕や脚の動きも悪くなるからです。

このように胴体内部に多くの滑り面があり、それが具体的にどこかを知ることは、自分の動きの改善にとても役立ちます。わたしは、ファシアの構造を学ぶようになってから、身体がさらに柔軟になったと感じています。
またこのファシアの知識と、アレクサンダー・テクニークが結びつくことでさらに健康になれることでしょう。胴体にある筋肉が関係を持って動くようになると、内臓に対しての圧迫も減るからです。
アレクサンダーは、彼のテクニークが内臓下垂の改善に効果があると彼の著書に書いていますが、それも納得できます。

胴体のファシア構造についての企画

(1)「カラ・ステッコのファシア・テキストを学ぶ」
  6月30日からオンラインで、セミナーが始まる講座です。
テキスト購入の関係があるため締め切りを設けましたが、録画視聴もできるようにするので、ライブで無いことを気にしなければいつでもお申込みできます。
http://yasuhiro-alex.jp/stecco_online_seminar/

(2)9月4日(土)背中が「長く広く」を知る(坂戸1dayWS)
  この「背中」の回は1日かけて、この「腹直筋鞘」と「胸腰ファシア」を知り、それを動かすにはどうするかを体験的に追って行き、自分の活動に応用します。
多くの実体験を伴うので、定員は6人です。早めにお申し込みください。
http://yasuhiro-alex.jp/sakado_1day/