先週金曜から始まった新しい講座は、声についてでした。

1.声のトラブルはなぜ解消されないか

アレクサンダー・テクニークを作ったF.Mアレクサンダーは、2冊目の著書で、「集中」について、次のように書いています。

「必要であれば1ダース以上の対象を「心に留める」能力を要求しますが、それは、多くの事は、その全てが進行しながら、1つの共通の結果に収束すること(指示を連続的に与えること)を意味します。」

これは、普通の「集中」についての考え方と大きく異なると思いませんか。
(アレクサンダーのこの「集中」の考え方に興味のある方は、訳を作ってあるので、CCCのこの部分を読んでみて下さい。)

わたしたちの普通の「集中」の定義は、身体の一部分だけしか考えずに、他の部分を頑張らせて緊張させてしまうことのようです。
その定義への思い込みが大きいために、何度試しても成功が無いのに、自分の「集中」が足りないと思ってさらに頑張って取り組みます。
部分に「集中」して取り組むことで、声が出なくなった声楽家、口の形や指示された呼吸方法を実行しようとして、管楽器がうまく吹けなくなった演奏者は少なくありません。
そのような場合には、かならず身体のどこかに大きな力みや緊張を伴っています。
(本来は、身体全体がしなやかに必要に応じて動くことが必要です。)
それは、人の全ての活動に起こることなので、普通に声を出すことにも当てはまります。

そのため、声についても普通に頑張ることではうまくいきません。
必要な努力と思ってやっていることが、逆の効果を生むことの方が多いからです。
自分がうまく使っていない場所に気づいても、そこを直接的に改善することは難しいのです。

わたしたちの身体は、全体が参加して機能しているので、特定の部分だけを変えるというわけにはいかないからです。
そこが、機械と異なる点です。
ある部分を変えようとすれば、関係する他の部分も変わる必要があり、それは普通の「集中」では起きないことです。
それを無理に行おうとするために、身体の他の部分に無理をかけて、他のより大きな障害に結びつきます。特にそれは、自然な呼吸の妨げになります。

 

2.どうやったら全体的に取り組めるのか

それでは、どうやったら全体的に自分を変えることができるでしょうか。
F.M.アレクサンダーは、それを変える鍵は身体に対する頭の動きだというこを見つけました。

彼は俳優でしたが、ひどい声枯れの原因が、声を出そうとして頭を後ろに引いてしまい、自分の身体全体を縮めて使っていることだと見つけました。
そして、その「頭の引き下げ」をどうしたら止めることができるかに取り組み、このテクニークを開発しました。

わたしたちはそれと知らずに、生活で行っている全てのことで、頭が身体を押し潰すように使っています。頭が身体から離れていくように使うことができれば、身体のいろいろな障害がなくなり、声も改善します。

それを変えるプロセスを、時間をかけて学んでいくわけです。
手短に、声を使うことに対してその内容を説明するとしたら、「自分の頭と身体の動きに指示を与えて」、その結果として声と呼吸の変化を起こすこと、といえます。

良い変化が起こるのは、自分を縮めて頑張らせることなく、身体が長くなり自由になりながら、声を出すことができるようになるからです。

しかし、これは知っているだけでは、使えるようになるわけではません。
身体はすぐに変わるのですが、身体に対する「自分の考え」を変えるには時間がかかるからです。
習慣を変えるためにはある程度の時間が必要で、これを学びたいという意志が必要です。

3.今回のクラスで行ったこと

最初にグループに分かれて、一人ずつに簡単な文を話してもらい、自分と他の参加者に起こっていることを観察してもらいました。
アレクサンダー・テクニークでは、自分が何を行っていて、それが他の人とどのように異なっているか、に気づく能力が何よりも必要だからです。

その後で、今回の参加者9人のそれぞれにわたしとワークを行ってもらい、身体の変化とその後の声や呼吸の変化を体験してもらいました。

ワークを受けている人にも気づきはありますが、それを見ていた人にとっては、その人の座り方や全体的な印象が変ったり、声が変ったことがはっきり感じられたと思います。

声に直接にアプローチしないのに、身体全体が変わることで、望んでいる変化が起こることが、理解できたことでしょう。

次回について

次回の2月21日(金)も、この続きです。
復習も行いながら、呼吸のメカニズムを学び、今回体験した内容をさらに深めていきます。
途中からの参加もできますので、興味を持った方はぜひご参加ください、
声が大きく変わることを体験できるでしょう。


「アレクサンダー・テクニークで声の悩みを改善」

朝日カルチャーで行った内容についての過去のブログ