2.マージョリー・バーローの教えたことを学ぶ意味
F.M.アレクサンダーから直接教えを受けた先生たちを、「第一世代」と呼びますが、その「第一世代」の先生の中でも、
マージョリー・バーローは特別です。
それは、彼女がアレクサンダーの姪で、長い間アレクサンダーと接していたからです。
マージョリーは、中学生くらいの頃は病弱で、他の子どもたちのようには学校生活が送れず、休むことが多くありました。
そんなとき、しばらく会っていなかった叔父のアレクサンダーの著書「個人の建設的で意識的なコントロール(略称CCCI)」
を16歳で読み、その内容に感激して、翌年にはアレクサンダーその弟のA.R.から個人レッスンを受けました。
多くの人は、CCCIを読むと、特に最初は困難を感じることが普通ですから、それに刺激されるということは、
マージョリーはかなり特殊な感性をもっていたことでしょう。
そしてレッスンを始めて1年後の18歳で、アレクサンダー教師養成コースの勉強を開始します。
トレーニング終了後も、アレクサンダーの元で教えることが多く、それは1949年(34歳)まで続きました。
その上姪として、休日もアレクサンダーと一緒に過ごすことがあり、そのようなときにもテクニークのことが話題になったようです。
また、1947年にアレクサンダーは脳卒中で倒れますが、その回復期に、マージョリーは週に一、二度彼の面倒を見に行き、
ワークについての話を何時間もしたそうで、それは貴重な時間だったと言っています。
つまりマージョリーは、17歳から34歳の18年間のFMを見て来たわけです。
多感な時期に、大きく影響を受けました。
そのため彼女は、F.M.が教えていた内容を「純粋なアレクサンダー pure Alexander」と呼び、それを他の人たちに
伝えようとしました。
他のどの先生たちよりもその思いが強いので、わたしたちは彼女が言っていることから、F.M.が実際にどう教えていたか
を知ることができます。
注意点もあります。
バーローが自分でも言っていますが、彼女が伝えているのは、「彼女のアレクサンダー」であって、それは限定的なものだということです。
人から教えてもらったことを伝えるときに、決してそのままではありません。
「純粋なアレクサンダー」を教えていたマージョリー・バーローのトレーニングスクールでさえ
また、マージョリーが語ったことで書籍に残っているものは、ほぼ1996年以降のインタビューのものです。
17歳から34歳までの18年間について、80歳を越えたバーローが語っているわけです。
ある程度年齢を重ねた人は、人の記憶がどれだけ歪められることがあるかを知っています。
その点も、考えておく必要があります。
3.1995年アレクサンダーメモリアルレクチャー
バーローは、アレクサダーメモリアルレクチャーを1965年と1995年の2回行っています。
それぞれアレクサンダー没後10年と40年の講演で、アレクサンダーの教えを「純粋なアレクサンダー」として守ろうとした
マージョリー・バーローの思いが現れているとても興味深いものです。
どちらも「Examined Life」の本に載っています。
今回わたしが行ったレクチャーは、その「1995年レクチャー」で言っている内容を扱いました。
この部分が今回のわたしのレクチャーのメインでした。
このレクチャーで、バーローが伝えたかったを考えると興味深いでしょう。
彼女は、1990年代のアレクサンダー業界の傾向に警告を与えたいと思っていました。
彼女は、このレクチャーのほとんどを「オーダー(指示すること)」を教えることについて費やしています。
それが、「インヒビション」とともに重要な2つのことだと考えていたからで、神経システムにオーダーすること
こそ、アレクサンダーの偉大な発見だと考がえていたからです。
マージョリー、それが教えられていない当時の状況を憂いていました。
彼女は「手を使って生徒を教えること」はその次に重要なことだと考えていたので、それだけを最優先にしている
多くのスクールのことを思っていました。
今回のレクチャーでは、マージョリーが書いている内容を紹介しながら、それが具体的に何を示しているのかを、
わたしなりの解釈をしながら、実際の動きの中でも試してもらいました。