前の「(9)知る、理解するという「入力」だけでなく、「出力」をさせる」からの続きです。

■生徒にとっての出力

生徒にとって、試験は出力です。
特に高校入試や、大学入試は、学んだ知識を長期的に保持する訓練でもあるので、
しっかりやれば、とても有効です。

わたしの息子は、大学受験で1年間浪人し、予備校に通いました。
その1年間を、他のことを考えずに、勉強だけに集中したことは良い経験だったと思います。
(彼は、3年生の夏までコーラス部と、バイオリンの個人レッスンを続けていました。)
この1年のおかげで、理系科目も良い整理ができて思考力がついたようですし、
英語が飛躍的に改善したことを感じました。

また、模擬試験は良い出力で、自分がやっていることの客観的な評価を得ることができます。

わたし自身も、新しいものを教えるときには、その準備に国家試験を使いました。

高校生に教えるだけだったら、とても狭い範囲で済みますが、それでは深みのないもの
になってしまい、教えるときの力になりません。
その知識が、どのような背景で、どのように使われているかを知ることが必要で、
その点で 実務経験は、大きな力を持つことでしょう。

わたしに会社での5年の経験はあっても、情報系ではなかったので、
それを試験で手に入れることにしました。
当時の「第1種情報処理技術者試験」、「オンライン技術者試験」、「データベーススペシャリスト」
の国家試験を受験し、全体像をつかむことができました。

■試験を使わずに生徒に「出力」させる

小テストや、定期試験もうまく使えば、生徒にとっての出力です。
でも定期試験は、勉強をそれほどやらない生徒にとっては、効果はありません。
(もちろん、少しでも定期試験に勉強が必要だと思わせるように授業を持って行くことは必要です。)

プログラムの授業で生徒が「出力」できるようにと使ったのは、「自由課題の制作」です。
授業で学習した内容を使うという制約は持たせますが、 何を題材にするかを生徒自身が選ぶことができて、
生徒は各自のアイデアを織り込みます。

例えば2年生の「プログラミン技術」(週5時間)の授業では、1年に3回それを行いました。
1ヵ月くらい前から生徒に予告しておけば、生徒の意識の上での準備ができて、スムーズに始めることができます。
使う授業時間は、4時間~8時間くらいですが、多くの生徒は、基本的には好きなので、授業時間以外も使います。

何人かの発想豊かな生徒がいて、彼らはやる気十分で始めてくれます。
それらは、試験で良い成績を取る能力とはとても異なるので、生徒間で成績とは、
異なった序列感が生まれるのは、興味深いことです。
発想であったり、仕事の進め方であったり、生徒のいろいろな面が現れます。

また、作った作品の発表会を行うことで、他の生徒の活動が理解できます。
そこには、他の生徒に対する評価の気持ちも生まれて、その気持ちは次の制作のとき
に、「意欲」として生きて来ます。

自分の作品の質を一度高いものにすると、それは、なかなか落とせないものです。

そしてこれは、3年生後半の「卒業制作」に必要な「実体験」と「意識つくり」のために重要です。
それができていれば、「卒業制作」を行わせることは苦労しません。

■自由制作の時間を確保することの重要性

普通科目で、このような時間を多く取ることは難しいことでしょう。

これは、わたしにとって前に書いた「授業内容の精選」でした。

授業で学ぶことで、生徒が卒業後に直接には使わないことは多くあります。
情報処理分野に就職すれば、電子回路はほとんど関わらないでしょうし、
プログラムを主に教えているのに、 卒業後に少しでもプログラムを扱う
ことになる生徒は、半分いれば良い方です。

そのような中で、どのような学習活動をさせて、何が生徒の力になるかを考えました。
授業が、知識の伝達から、もっと全体的なものへと向かったことは教師経験の中での変化でした。

←前へ  次へ→
←「授業のスタイル1」へ