(4)「An Examined Life]について

この本は、Trevor Allan Daviesのマージョリー・バーローへのインタビューで構成されています。
主にアレクサンダーが教師養成を始めてから何が起こっていたか、彼がどう教えたかについて書いてあり、彼が語った言葉でちりばめられています。
なぜマージョリーが大事に思ったかの背景があるので、アレクサンダーの言葉がより響いてきます。
読みやすい英文なので、ぜひ直接に読むことをお勧めします。

一見、出来事の羅列のように感じますが、マージョリーの重要に思うことが繰り返し出てくることで、何を基本と考えていたか、感じ取れます。
その内で、わたしが特に重要だと思ったものを4つここで紹介します。

1)アレクサンダー・テクニークは止まったままで使うのでなく、動きを行って使うもの

マージョリーは次のように書いています。
「『動かずに、手に入れようとしないように(ヤスヒロ注:ここでは、コーディネーションの良い状態のことを言っています)』とFMは言いました。
自分に良くない所(ヤスヒロ注:引き下げているなど)を感じたら、動くように刺激を与えます。
そして、止まって、オーダーを与えて、少し動きます。 何回か行えば、そこから抜けだせます。
そこで、長くなり、広くなることが起きます――抑制し、指示を出せば、動きの中で『変化』が生まれるのです。

行うことは『刺激(stimulus)―考え(conception)-インヒビション―ディレクション―動き(movement)』のシーケンスです。」(P.143)

動き出すときに、身体の中のエネルギーの流れ(ディレクション)は、その前の静止状態とは、変わらざるを得ません。
その流れは、協調的なこともあるし、そうでないときもあるでしょう。
それが、協調的であれば、身体の良い変化が自動的に起こるということは、本当に興味深いことです。

でも、ついわたしたちは、止まった状態でディレクションを与えコーディネーションを上げようとします。
そして、それがどう感じられるかで、良い・悪いの判断を行い、フィーリング(感覚)の罠に入ってしまいます。

アレクサンダーは、次のようにも言ったそうです。
「変化は、必ず動きの中で得るように。止まったままで得ようとしてはいけない」(P.169)

2)抑制は、脳(神経システム)の最初のリアクション対して行う

マージョリーは、わたしたちが動くときの基本は、
「意識的であれ、無意識的であれ、メッセージが、脳から神経システムを通って身体に行っている。」(P.15)
ことで、 それならば、アレクサンダー教師が行っていることは
「先生は、直接的に神経システムに話しかけているのです。わたしは、骨や、筋肉などに興味はありません。
それらは二次的で、脳がやっていることと、神経システムがやっていることの結果として起こります。

わたしは、ユースを良くしようとしているのではなく、『ディレクションを与えるメカニズム』を良くしようとしているのです。」(P211-213)
ということになります。

そうなると、わたしたちが抑制するものは
「動きに結びつく『最初の反応』を急いで、抑制しなくてはいけません。動きに対する「No]ではないのです。

わたしたちが求めているものは、『考えが、どこに最初に行くか』が分かるようになることです。
そして、その考えを抑制します。動きではなく、考えを抑制するのです。」(p.221、222)
なのです。

わたしはこの最初の反応には、「どうせうまく行かない」という思いや、不安、怖れなど、いつの間にか入り込んでしまう無意識的な思いが、含まれると思っています。
空間の中でどう動くかのシンキングと共に、それは、動きの質を大きく変えているのではないでしょうか。

マージョリーは、結果では判断しないとして次のようにも言っています。
「生徒が行ったことが良いかは、『抑制し、方向性を考えた(directing 考えて出す)かどうか』だけで決まります――わたしが伝えたその手順を使ったかどうかです。その結果がどうかでは、判断しません。 それは神に任せなくてはいけません。」 (P.221)

これが難しいのは、わたしたちは、プロセスに信頼を持てなくて、結果がすぐにでないとあきらめてしまう傾向を持つからです。

前へ     次へ(アレクサンダーの教え方を守ろうとしたマージョリー・バーロー4)