自分の身体をテンセグリティと考えて、トーンの違いにより何が起こるかさらに実験してみます。 身体を動かすこと、演奏やスポーツ、その他のスキ向上に役立ちますので、ぜひ試してみてください。

(1)トーンが上がると、身体の各部が動かしやすくなる

【実験1】
1)イスに座って、できるだけ身体をダラッとさせます。
それから、片方の腕の頭の高さまで持ち上げて下さい。

2)今度は、頭が身体から離れる方向に動いていくと思い、首、胸、お腹、お尻、脚、足が順番にその動きに従っていくと思ってから、同じように腕を上げてみます。

後の方法でトーンを上げると、腕が軽く上がることを体験したことでしょう。
身体全体をアレクサンダー・テクニークを使って適切なトーンにすると、動きの楽さが生まれます。

【実験2】
1)立った状態で、身体をダラッとさせて、イスなどの重い物を持ち上げてみます

2)今度は、頭が身体から離れる方向に動いていくと思い、首、胸、お腹、お尻、脚、足が順番にその動きに従っていくと思ってから、股関節、膝、足首を使って身体を下げて、同じ物を持ち上げます。

重い物を持ち上げるのは脚の役目なので、「持ち上げるときの作業は脚が行う」と考えることは役に立ちます。
そのときの身体全体のトーンもそれに、影響します

「持ち上げる」という考えよりも、2)の指示を行い続けことを第一番にすることで全体のトーンが保たれ、軽いと感じることでしょう。

トランペットやクラリネットやフルートなどの楽器を持ち上げるときに、思い出してみてください。
適切なトーンが持てると楽器との一体感が増すことでしょう。
(特にチューバやトロンボーンなど、重い楽器を持つ人にとって役立つと思います。)

朗読をされる方も、本のような軽いものでも、どう持ち上げるかによって重さを違って感じます。
軽く持ちあげることができたときには、トーンも適切で、それは声にも良い影響をもたらします。

(2)トーンが、正確なコントロールを可能にする

機械の仕組みで、正確な位置きめをするときは、バネなどで弱い圧力を加えます。
適切な張りがあると、コントロールが正確になります。
ボーリングの球を投げるときも、緊張しないようにとリラックスしすぎたら、うまく投げれなかった経験はないでしょうか。

サッカー選手のキックの瞬間の写真を見ると、ときどき手の指先を伸ばしていることがあります。
そうすることでトーンがあがり、正確なコントロールができます。

【実験】
1)何か細かいコントロールが必要な作業を選びます。
(字を書くことでも良いし、楽器演奏での指使いや、何かの工作でも構いません)

2)その作業を、ダラットした姿勢を取ってやってみてください。

3)今度は、頭が身体から離れる方向に動いていくと思い、首、胸、お腹、お尻、脚、足が順番にその動きに従っていくと思ってから、その作業を行ってみて下さい。

トーンの違いによって、コントロールがうまくできないことを体験できたしょうか。
このことから、姿勢の悪い生徒は、字が下手だったりもするわけです。
力の入り過ぎもコントロールの妨げになりますが、力の抜けすぎも悪い影響を与えます。

刀鍛冶は、仕事に入る前に神棚に祈っていたそうです。 精神を整えることは、自分にトーンを持たせることにつながります。 精神を望ましい状態にして、トーンを上げることは、技術に必須な要因だったことでしょう。

A.R.の崩れた座り方

適切なトーンのことを考えると、いつもトーンを持たなくていけないと思いがちです。

アレクサンダーと共に教師養成を行った弟のアルバート・レデン・アレクサンダー(A.R.と呼ばれていたそうです。兄は、F.M.と呼ばれていました。)の逸話を一つ。
A.R.はときどき、とても崩れた格好で座っていることがあったそうです。それを見て、生徒達はびっくりしたのですが、A.R.は、「戻り方を知っているから構わない。」と言ったそうです。

どうぞ、疲れたときは崩れた姿勢を取ることも自分に許して下さい。

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