立ち姿勢の悪い癖とアレクサンダー

次の3つの癖は、8割以上のとても多くの人に見られます。

(1)腰を押し出している姿勢
(2)肩を後ろに引いている姿勢(「きをつけ」のやり過ぎの姿勢)
(3)立っているときの脚の緊張

このうち、(1)と(2)は、アレクサンダーが著書「人が受け継いている最高のもの」で悪い呼吸に伴う姿勢について言っている、次の3つに相当しています。

・ 胸の上部を持ち上げ、多くの場合で肩もそうしている。
・ 腰のあたりで、背中を反り返らせている。
・お腹を突き出していて、腹部内部の圧力に異常な乱れがある。

(3)については、アレクサンダーが3冊目の本「自分の使い方」の第1章で、彼が書いている「つまさきを縮めて下方に曲げていた」ことで、彼の全体の使い方に悪い影響を与えていたことと共通する所があります。

感覚が間違っていると訴える

これらを1つ1つ見て行きますが、どれもかなりの期間をかけて習慣になっているものなので、そう簡単には、変えられないものです。
変えていくためには、理解することが必要です。

自分自身と他の人を観察することは、姿勢に対する客観的な見方を与えてくれます。
これが理解の第一歩ですので、観察することを続けて行ってください。

次に理解しておきたいことは、「人の感覚」がどういう特性を持つかです。
慣れた姿勢から、無理のない姿勢(呼吸が深くなり、楽に歩けるようになる)になるのに、「これは、間違っていて、やってはいけない姿勢だ。」という感覚が起こります。
それが余りにも「慣れない」もので、「違和感が強い」ものだからです。

この感覚が変わらないと、自分で姿勢を変えることは不可能です。
そのためには自分の間違っているという感覚が信用できないことを、知っておく必要があります。
3つの悪い姿勢の特徴を見ていきながら、生徒さんが訴える感覚を紹介しましょう。

(1)腰を押し出す姿勢

左の図では、徐々に、腰が押し出された状態になっています。
中央の姿勢くらいでは、普通だと感じる人が多いでしょう。

駅で電車を待っている人を観察すれば、さまざまなバリエーションを観察することができます。

みなさんが小学生が立っているのを見たり、未開の地の原住民の映像を見ると、これは、現れていません。
現代の文明生活が、わたしたちが大人になるにつれて、身に着けさせた悪影響と言えます。

 

 

試してもらいたいのですが、みなさんは、どの腰を前にやれて、どの位腰を後ろに引くことができるでしょうか。
左の写真では、10cm程度動いています。
これで、みなさんが普段の生活で、どのくらいこの部分に可動性を持っているかが分かります。

後ろに引くことが難しい方は、腰を前に出す習慣がかなり強くなっていると言えます。
そうでしたら、「股関節を曲げ」てみて、どう感じるか試してみて下さい。
(多くの人が立っているときに、股関節で、胴体を前に傾ける可動性を失っています。)

【妨げになる感覚認識】
この傾向のある人が、ワークを受けて変わると
「かなり胴体が、前に傾いている」
「お尻を突きした、みっともない恰好をしている。」
という感想を言います。

周りの人がそれを見て、
「少しも前に傾いていない。」
「確かに前よりは、お尻が出ているが、それは魅力的に見える。」
というような感想を言います。

本当に多くの人が、腰を前に突き出しているので、中には、お尻の後ろの面が、ほとんどかかとの真上か、それより前になっていると人もいます。 そのような人にとって、変化した後の姿勢は、さぞかしとんでもない姿勢に感じることでしょう。

この姿勢の後で、元の姿勢に戻ってみることで、前の姿勢が苦しくて、呼吸が楽でないことを感じます。
でも、その体験があっても、そのいつもの苦しい姿勢はすぐに慣れた自然なものに関じられ、新しい楽だった姿勢は不自然に感じらます。
それが変化の妨げになります。

 

(2)肩を後ろに引いている姿勢

左側は、少し引いていて、右側の写真は、かなり引いた状態です。

【妨げになる感覚認識】
この傾向のある人が、ワークを受けて変わると
「かなり、猫背になった感じがする」
という感想を言います。

もちろん、周囲の人は、「丸まっていない」と言ってくれます。

「肩を後ろに引く」傾向の強い人は、
・猫背になっている人の強い印象があるため、そうなってはいけないという思いがある
・「背中が丸くなっている」と注意を受けてきた
という人がいます。

2つの肩甲骨が、中央に近づき過ぎていて、後ろにかなり飛び出しているような人もいます。

まじめな人ほどこの傾向が強いようです。
学校で、全体に「きをつけ」の号令がかけられるときに、先生は、そうしていない生徒に対して指示を出しています。
すでにそうしている生徒は、その号令で、「きをつけ」をしていると「自分で感じる」まで胸をそらそうとします。
何かの筋肉の働きを感じるまでにやることは、やり過ぎになるのですが、それが普通の良い姿勢と感じます。

立っているときの脚の緊張

3つ目は脚に力が入っていることです。
多くの人は、腿(もも)の部分に力が入っています。
アレクサンダーがやっていたように、つま先に力を入れて、脚を固めている人もいます。
とても多くのパターンがあるので、写真では示しませんが、みなさんも自分の脚がどうなっているか考えてみて下さい。

クラスでは、ときどき他の人の脚を触ってもらって、どのくらい違うかを確かめてもらいます。
自分の立ち方は自分では自然に感じられるので、脚の緊張が自覚できないからです。
8割以上の人が、ひどく力を入れているので、普通の人はほとんど力が入り過ぎているといってもよいほどです。

【妨げになる感覚認識】
ワークを受けて変わると
「ふらして、立っていられない感じがする」
と言う人がいます。
本当にふらふらしては、困るのですが、周りで見ている人にはそうは見えません。

姿勢の悪さと呼吸

姿勢の悪さは、身体のどこかにひどい緊張がある兆候です。
同時にどこかに、緩み過ぎの部分があり、身体に大事な「全体性」を失っています。

アレクサンダーは、著書の中で、
「身体の緊張はどれも全て、胸部を固めさせてしまうことは、科学的な事実だ。」
と言っています。
胸部を固めると、もちろん、肋骨の動きが妨げられ、呼吸の悪さにつながります。
姿勢を呼吸との関連でも考えて行ってください。

関連:「気がついた姿勢の悪癖をどう直すか」