多くの医師や思想家と深い交友関係を持っていたアレクサンダーは、決して独断で彼の本を書いていたわけではありません。
MSI(1910年初版~1918年改訂版)の前にはシドニーのマッケイ博士、ロンドンでのスパイサー博士他との交友があったし、特に1915年からのデューイとの深い親交は、1923年の2冊目の本「個人の建設的で意識的なコントロール」(CCC)につながりました。
(アレクサンダーは多読家ではなかったようですが、それらの一流の友人から情報を仕入れ、最低限の本を読み、彼らの意見を聞きながら、体験を通して自分の考えを練り上げたようです)。

CCCまでの10年弱の間は、アレクサンダーは毎年ニューヨークとボストンに半年以上滞在して大金を稼ぎ、夏期を中心に休暇を兼ねてイギリスに戻るくらいでした。
その間にデューイといろいろなことを話したことでしょうが、どのような付き合いだったか興味あるところです。

 とにかく、CCCの原稿ができたときには、デューイと一緒に細かく内容を確認したと言っているのですから、その影響の大きさが伺えます。
デューイもアレクサンダーから影響を受けた本「人間の特性と行動」を書いていて、その中にアレクサンダーの名前も出てきます。
(3冊目の「自分の使い方」は、テクニークを作り上げた過程を書いているので最初に読むべき本だし、4冊目の「いつも人に影響するもの」(72歳のときに出版)は、テクニークの完成形と言える説明と、他の技法などとの違いが書いてありますが、最初の2冊に比べると目新しさはそれほどありません。)

「身体エクササイズ」の問題点

MSIとCCCには、多くの画期的なアイデアが書いてありますが、その一つが「身体エクササイズ」への批判です。

MSIのパート1第2章でそれを取り上げていて、その一つを簡単にまとめると、

人は身体の衰えを感じて何かの「身体エクササイズ」を始めるが、そのエクササイズの時間と他の生活の時間を別のものと考えていて、エクササイズで少し身体に良い動きをさせても、生活や仕事に戻ると、何も考えずに前の悪い使い方を始めてしまう、

ということになるでしょう。

動物や未開人が行っているような方法で、「意識的」でない「身体エクサイズ」を行えば、現代人の自分の身体への感覚認識が動物や未開人のようには良くないので、最初は効果があっても、やがて身体に支障がでてくる、とも言っています。

これはアレクサンダーがいつも言っていた、心(考え)と身体の動きを切り離すことはできない、ということの例ですね。

心と身体を切り離す例は、今でも至るところに見られます。

楽器の演奏などでも、メカニカルなトレーニングという言い方をするときには、その練習をしているときに頭は何を考えていても良いという印象を与えますし、身体を鍛えようとするときに、何を考えているかに注目する人はほとんどいないことでしょう。

もちろん、芸術やスポーツなどの分野の優秀な人は、心と身体が切り離せないことを良く知っことでしょうが。

MSIのこの章では、リラクセーションや部分だけに取り組む呼吸法を明確に否定しています。

MSIを扱うGWの坂戸連続WSとMSIの販売

坂戸で5月2日から行うGW連続WSでは、このMSIを取り上げます。
じっくり読む時間を取るわけではありませんが、WSのベースとして簡単に触れていくので、参加者はMSIを読んで質問などを考えていてください。
(5月2日と4日にまだ1名ずつ空きがあります。空きがあれば直前まで受け付けていますので、お申込み下さい。http://yasuhiro-alex.jp/gw-alexanderws/ 残席があるかは、http://yasuhiro-alex.jp/で確認して下さい。)


また、参加者以外の方もこの機会にMSIを読んでみませんか(http://yasuhiro-alex.jp/products/)。
じっくり読むと具体的なヒントが見つかります。
この本は、アレクサンダーの1冊目の本として、全くテクニークのことを知らない読者を想定して書いているので、その点でも取り組みやすいと思います。