11月10日(先週土曜日)に、初めての池袋レクチャーを行いました。
13名の参加者の皆さんありがとうございました。
「前半」と銘打って予定していたのですが、準備をしているうちに分量が多くなり過ぎたので、2回ではなく、3回連続シリーズで行うことにしました。

レクチャーの前半は、アレクサンダーがタスマニアに生まれてから(1869年)、40歳くらいまでの歩みを扱いました。
彼が、15歳で補助教員を務め(1年半)、
その後3年間のスズ鉱山会社での事務員生活を過ごし、
20歳でメルボルンに行き
25歳には既に彼のテクニークを教え始め、
1904年に35歳でロンドンに渡り、瞬く間に成功し
1910年には、彼の最初の著書「人が受け継いでいる最高のもの」を出版した
ことなどについてです。

レクチャー後半は、彼の教えた内容、特に「ブリージング・マン」と呼ばれる原因となった呼吸についてでした。
彼が教え始めたと言われている25歳(1894年)の時点では、教える技術は完成されてはいませんでした。
彼は、朗誦家として身を立てようとして、そのついでに声のレッスンを行ったのです。
(それでも、彼が著書「自分の使い方」の第1章「テクニークの進化」で書いている内容の最初にあるような知見を使ったことでしょう)。

25歳のほぼ1年間を、生まれ故郷のタスマニア島各地で朗誦のリサイタルを行い、声について教えました。
次の1年間はニュージーランドで同様なことを行います。
大人気で、大喝采を受けました。特に後半滞在したオークランドでは市長や市議会が彼の生徒になるほどでした。
この2年間でテクニークの本当の価値を認識したとともに、初期の教え方を作りあげていったことでしょう。

テクニークの大きな可能性に気づいたので、メルボルンに戻り、翌年(1896年)からはリサイタルをやめて教えることに専念しました。

レクチャーでは、これらの期間に彼が行ったことを、最初に「テクニークの進化」についての図を使って簡単に振り返りました。
でも、「テクニークの進化」には、ほとんど呼吸のことについて書いていないのに、どうしてロンドンに渡る前後は「ブリージング・マン(呼吸の人)」となったのでしょうか。

彼が書いている中で、教え始めて2年目のニュージーランドのツアーの間に、マオリ族の自然な呼吸法に感銘を受け研究した、
という記述があります。
このことと、自分の声での知見、さらに他の人に教えた経験から彼の呼吸に対する理解が進んだようです.

その頃の呼吸について彼が考えていた内容は、その前後に出された多くの小冊子で知ることができます。(レクチャーでは1906年の小冊子の訳を配りました。)

その後に彼が書いている内容の力点は、「呼吸」という個別的なものから「全体的 [whole]」「意識的」ということに移って行きます。
その過渡期に出されたものが、彼の最初の著書「人が受け継いでいる最高のもの」と言っていいでしょう。

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次回の池袋レクチャーは、1910年前後のこの時期を再び取り上げ、
・「呼吸」からどのように「心身全体」、「意識的コントロール」に向かって行ったか。
・1914年からの10年間を半年ごとにアメリカとイギリスを行き来しながら、特に世界的な哲学者で教育学者のディーイと交わりどう考えて行ったか。
(それは2冊目の本となって現れます)
・1931年に始まった最初の教師養成コースがどのようであったか
などを中心に彼の生涯を追って行きたいと思います。

1.詳細が決まり次第連絡を差し上げます。連絡を希望される方は、タイトルに「第2回レクチャー連絡希望」と書いて、お名前だけを記入し、yasuhiro.alex@gmail.comまでメールしてください。

2.第1回の資料を希望される方は、送り先住所を御記入の上Yasuhiro.alex@gmai.comまで、連絡下さい。(送料込み3000円)
【資料の内容】
1)レジメ(年表込)7頁 2)地図(カラー)2頁
3)「テクニークの進化」訳(19頁)と、図(カラー)2頁
4)「フル・チェストブリージング、ウイスパード・アー」
(1900年頃の小冊子からの抜粋文など))
5)1906年小冊子「呼吸と声の再教育を行う新しいメソッドの紹介」の訳(9頁)

【第1回レクチャーの参加者感想】
(S.J.さん)
よかった点
アレクサンダーの育った環境、テクニークを教えるに至るまでの経緯、テクニークの初期の様子など興味深く学べました。
資料も沢山いただけました。
もう一つと感じた点
呼吸改善をセールスポイントにしていたFMアレクサンダーが呼吸を強調しなくなった理由について、もう少し掘り下げて教えてほしかったように思います。
テクニークを体得すれば呼吸は自ずと改善されるから、また呼吸だけをクローズアップするのはテクニークの理解に悪影響を及ぼすからという理解でよろしいでしょうか。
またテクニークについての知識不足、理解不足のためだと思いますが、理解が難しいところがありました。
いただいた資料や今後のレッスンなどで補っていきたいと思います。

(S.M.さん)
全体を俯瞰してから詳しく入っていくとか、話すことをたくさん用意しておいて細かく決めないとか、資料を十分に用意してあって板書は少なくてすむとか、教師歴の長いやすひろさんの工夫がちりぱめられていてとても楽しかった。
今度ウィスパードアーやってみたいです。
アレクサンダーテクニークのレッスンとは違う、やすひろさんの授業を受けることの新鮮さと楽しさの感想ばかりですみません。
もちろん、アレクサンダーの若い頃の様々な背景もわかりやすくて興味深かったです。

(T.Y.さん)
他では学ぶことができないアレクサンダー氏について歴史を知ることができた。
それを通じて、どうやって彼のテクニークが形成されていったのかがわかったことと
彼も自信の生涯を通じてテクニークを発展させていたことがわかった。
次回(中編・後編)も楽しみにしています。

(O.M.さん)
普段のグループレッスンでは、じっくりFM の人となりについて知る機会はないので、興味深かった。沢山の資料や関係者の著作を紐解いていらっしゃる康裕さんならではの講義内容だったと思う。
配布資料が充実していて良かったです。

(K.Y.さん)
ウィスパード Aのデモで、文字を読んでいただけではわからないところが、具体的な動作として、理解することができてよかった。
ただ、自分としては、呼吸関連の話の方が興味深く聴くことができました。
呼吸でいえば、アレキサンダー氏が自分の声の問題をどのように改善し、克服し、アレキサンダー理論として確立していったのかといったところが聞きたかった。

(Y.H.さん)
アレクサンダー・テクニークの成り立ちをより理解したいと思って、参加しました。
本を読んでも、なかなか全容は頭に入りにくく、こちらのレクチャーで、これからアレクサンダー・テクニークを学ぶ上で、理解の手助けになったらと思って受けました。
写真が豊富で、初めて見る写真がほとんどで、リアルなアレクサンダーさんが浮かび上がってきました。
資料が充実していて、こちらを読むだけでも価値があるなあと思いました。
ただ、レジュメでいただいているので、前半の説明はちょっと長く感じました。
後半、個人的に一番聞きたかった、なぜ「呼吸の人」と呼ばれていたかというのが具体的に聞けて、また、ウィスパードアーの説明も聞けてよかったです。
このあたりがもう少し長く時間をかけて聞きたかったです。

(I.K.さん)
今までは「タスマニア出身」「質問魔でめちゃくちゃ厄介な生徒だった」「演劇の人だった」「ロンドンに渡って教えた」「ARっていう優秀な右腕的な弟がいた」などなど、断片的な話しか知らなかったF・M・アレクサンダーの物語が、本当に実在した人物の話として、臨場感をもって感じられるようになった講座でした。
彼の教え方の変遷をたどるのはもちろん勉強になるのですが、個人的には彼の人生の持つ魅力に惹かれる方が大きかったです。とはいえ、ただ断片的な情報で学ぶよりもこうして一つながりの物語として知る方が、彼の全体像のイメージが捉えやすくて大変学びやすかったと感じました。

(S.Y.さん)
テクニークの背景のストーリーを知っていくと、テクニークの進化の内容に親しみが沸いてきました。
自然や動物に親しんで育った事、高校生位の年ですでに教育について考える下地があったこと、俳優をしながら探究をしていたというところ、ボンヤリしていた背景が見えてきて、興味深かったです。
どんな人で、どんな時代、何をしていたのか、英語が読めないわたしにとっては有難い情報です。
自らのストーリーを語る意味や、大切さも考える必要を感じます。

(O.M.さん)アレクサンダーが声枯れの問題を自分で探求し始めて(1892年)から、声のレッスンを始める(1894年)までが、短いことに驚いた。
『EOT』の記述は1902年位までということで、この時期がテクニークの一応の完成と見て良いのでしょう。
「頭と首と背中の関係性(のちにプライマリ・コントロール)」「ディレクション」「間接的な方法(のちにミーンズ・ウェアバイ)」「インヒビション」などの概念が、当時のパンフレットをもとに、どの時期に使われだしたのか分かり、興味深いものでした。
呼吸が自分の使い方の指標になることを、再確認しました。
深い呼吸が良いような気がしていたがそうではないらしい。しかし、「自然な」呼吸が良く分からない。マオリ族の呼吸(やマオリ語)には、現在も良いものが残っているのでしょうかね。

(M.K.さん)
F.M.さんの生涯について 今まで年代ごとに考えたことがなかったので、役者を生業としていて中年ごろに不調が起こって それからテクニークの発展に至ったようにイメージしていたが、全てがもっと若い時から始まっていたことが意外だった。
後半の呼吸について、もっと詳しく知りたいと思った。頂いた資料を読み込んでみると質問することも出てくると思うので、そのうえでレクチャーの中で実践する時間が欲しい。「やすひろさんによる FM氏の呼吸の再教育 実践編」みたいな・・
資料が豊富で有り難いです。

(K.R.さん)
楽しかったです。
とてもわかりやすく、頭の中が整理しやすくなりました。

(N.M.さん)
アレクサンダー・テクニークに限らず、何かを学ぶ時に、それが出来上がった経緯や作りあげた人の考え方、人となりなどを知ることは、学ぼうとするものを咀嚼し、自分なりに取り入れようとするときに、非常に役立つものだと思います。
アレクサンダー関係の本をいくつか読んではいましたが、もう少し知りたいと思っていたところにちょうどこのレクチャー開催を知り、申し込みました。
F.M氏がどう教えていたか、というのはこういった資料を元に推測していくしかなく、また、資料も集めにくく、英語がベースというハードルもあります。
それをある程度まとめた状態で、日本語で知ることができる、また、アレクサンダー・テクニーク講師としての確実な経験をお持ちのヤスヒロさん自身の解釈も交えて伝えていただける、というのが、とても理解の助けになりました。
自分がアレクサンダー・テクニークを人に教えようと思う時に持つ、迷いや疑問を検討するのにも、参考になる情報となりました。
アレクサンダー・テクニークを学ぶ人、学び始めた方から、昔学んだという方までに広くオススメのレクチャーです。