3回講座の最終回が一昨日終わりました。
今回のブログでは、その内容の幾つかと、関連事項や、他のエクササイズについて書きます。

デスクワークと足腰との関係

わたしたちの身体の各筋肉は、全体として関連して働いています。
脚や骨盤周りの筋肉が弱っている人は、胴体を安定して支えらません。
腰痛の人がコルセットなどで胴体を支えますが、それはそのような力を胴体が必要としていることを示しています。
でも、コルセットに頼り過ぎると、腹部の筋肉は働くことを忘れてしまいます。肩こりや腰痛がある人はその部分の状態だけでなく、自分の腹部から下半身全体についても目を向けてみてください。
それはまた上体の不必要な緊張を取り、疲労を少なくするので、集中力と持続力に影響します。

でもそれは 、正しい位置にあるという静的なものでなく、いつも行われている小さな動きの中でバランスを保つことです。
良い姿勢は、決して止まっている状態では得られません。
さらに、足や腰の筋肉の筋トレをすれば改善されるというものでもなく、全身を調和のとれた使い方をする必要があります。

簡単な例で見てみましょう。

イスに座って、しばらくその状態でいて下さい。
そして、自分の座り方がどうなっているか、座り心地の良さ、そこからの身体感覚に気づいてみます。
普段行デスクワークの体勢を取ってみても良いでしょう。

確認したら、立って2~3分歩き回り、もう一度座ってみます。
座るときに腹部を潰してしまう癖の人が多いのですが、自分がそうしたくなるかどうかに気づいて下さい。
それを感じた人は、少しそうならないようにしてみます。

座った直後から、自分の座っている感じが時間の経過とともにどう変わるかを観察します。

人によって異なりますが、歩くことで脚を使い筋肉を活性化した直後では、座り心地が違うことが分かるでしょう。

そして、それが少しずつ変わっていき、いつもの慣れた座った感じになることが分かります。

イスは人の健康に極悪な発明

アレクサンダー・テクニークを作ったF.M. アレクサンダーには4冊の著書があります。
4冊目の本「生きている上で変わらないもの」に、生理学者のG.E.コグヒルが文を寄せていて、彼はそこで「イスは健康にとって極悪の発明である」と書きました。

イスを普通の人が使うようになったのは最近のことで、前は床の上に座っているか、しゃがんでいるか、のどちらかでしたが人はその姿勢で十分楽にいられたのだそうです。
そうすることで脚の伸筋をうまく使えて、脚を内側に向けてしまう傾向も作らなかったと書いています。

イスに座って、どこかの筋肉を緩め過ぎになってしまうこととはかなり違います。
腰痛や肩こりも、余り起きなかったことでしょう。

スクワットを試してみる

自分の頭が常に上方向に向かうことを考えながら、何回かスクワットを行ってみてください。
あまり運動していない人はこのような運動でも、身体の筋肉組織全体に変化が生まれます。

わたしが10年以上前に教わった海外アレクサンダー教師で、ニューヨークフィルの団員でもあった先生は、何をするにもまずその前にスクワットを行わせました。
それだけで音楽家の演奏が変わるのでとても効果のある方法だと、そのとき感じたことを覚えています。

注意ですが、身体全体の調整のために行うスクワットは、筋肉鍛錬のためのものではありません。
その正反対で、ほとんど努力が感じられないものが理想です(そのために、行っているときに、頭の動きを考えます。)
けっして、無理のないように行ってください。
浅いスクワットで十分なので、負担がかかると思ったらその深さ以上には行く必要はありません。

数回のスクワットの後に、もう一度イスに座って、どのように座り心地などが変わったかを観察します。

股関節の位置と、イスの上での動き

最初にイスに座りながら、股関節から前傾したり、後傾したりして、動き易さを感じて見ます。

それでは股関節の正しい位置を確認してみましょう。
立っているときに、骨盤の下部あたりの高さで、両脇に少し飛び出した固い骨の部分があります。

大腿骨(腿の骨)の大転子と呼ばれる部分です。
股関節は、それより少しだけ高い所にあります。
それは多くの人が考えているよりも、低いことでしょう。

両脚の2つの股関節の幅は、手の長さ位です。

立った姿勢で、股関節の位置を確認したら、次にイスに座り大転子の位置を見つけます。
それより、少し後方が股関節の位置です。

その高さは、座面より少し高い位の場所にあります。かなり低い所です。

股関節の位置を確認したら、そこから動くように考えて、もう一度前傾、後傾を行ってみてください。

違いがあるでしょうか。

イスに座っているときの下半身の自由さ

クラスでは坐骨についても取り上げましたが、ここでは割愛します。

このようなことを行いながら、デスクワークで楽に股関節が動けるかを考えることが役に立ちます。

そして何よりも、作業を行うことは、誰もが思っているような身体を固めることではないという理解が重要です。周りを見たり、何かを取ったり、キーボードを打ったり、字を書いたりするときに身体を固めないで、それが全身のストレッチになるように使うことで、余計な緊張による疲労がなくなります。
脳は自分が行なっている仕事に集中することができます。

10月からの新しい講座

来月から声を扱いますが、身体全体を使うということでは、これまでの内容と違うわけではありません。
その人に特有の身体の使い方は、声にも影響しています。
それについてワークを行いながら、呼吸や発声の仕方に、身体がどう関わるかを見て行きます。

アレクサンダー・テクニークは、F.M.アレクサンダーが声が出なくなったことをきっかけに作り上げたものです。
彼はどうすれば声枯れにならないか探求し、それを解決するためのテクニークを作りました。

そしてそれが、自分や他の人の健康や精神の安定にも大きく役立つことを見つけて、全ての人にとても役立つものだと気づきました。

仕事での会話、普通の会話、人前で話す、朗読、歌、のどれもがその人の特徴が出やすいものです。
多くの人どこかを固めて、身体に負担をかけています。
自分が声を使うときの様子に目を向けて、この機会にもう一度自分の体の使い方全体について考えてみませんか。

今まで長い間こうだと思っていた自分の声が、変わることでしょう。

新宿朝日カルチャー「声を楽に使うためのアレクサンダー・テクニーク」
(2018年10月19日(金)、11月16日(金)、12月21日(金))

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