アレクサンダーが教えていたときには、ハンズ・オン・バック・オブ・ア・チャアという有名なプロシージャ(プロシージャとはアレクサンダー・テクニークを学ぶときに行う練習内容をさします)以外には、腕の使い方を特別に教えることはなかったようです。

しかし、彼はイスで立ったり座ったりを教えながら、頭と首の、胴体に対する動きに微妙な調整を行い、そのときにはもちろん肩も含まれていて、肩の辺りにもよく手でワークをしていました。
それは、頭から肩にかけての筋肉に適切なトーンができることが、人が全体として良い状態になるために必要だからです。
それができれば、肩甲骨の位置が自然にうまく調整されて、腕の動きがとても楽になります。

しかし、このトーンは身体全体のバランスある立ち方や、使い方から生まれるものなので、その部分だけで作るものがでないことを理解してください。

アレクサンダーが教えた腕の位置

アレクサンダーがレッスンを受けるために生徒たちの腕の位置について、特に注意していたことがあります。

それは、座っているときに、腿の上に置いた手を、掌を上にしておくことです。
(アレクサンダーは、普通の生活でいつもこうしなければならないと言っていたわけではありません。
他の人たちの前では明らかに変に見えますから。)

といっても、座禅を組むときなどの手の位置は、そのようになっているので、特にアレクサンダーの専売特許と言うわけでもないと思います。

なぜそうするかと言うと、多くの人が腕を下方向に落しがちになり、肩から腕を重くしているからです。
それは頭や首を下方向に引張り、姿勢を崩す原因になります。
なぜそれが起こるかはさまざまですが、無理にリラクセーションを行なおうとしたり、ダンスや楽器演奏の先生が、肩を緊張させて持ち上げるの見て「肩を下げなさい」という指示をして、それを忠実に実行した結果からかも知れません。

試しに、イスに座って手を掌を下向きにして腿の上に置き、腕に重さがかかるようにしてみてください。
次に、同じことを、掌をし上向きにして行って見ます。

掌を上向きにすると、腕に重さをかけづらくなることを体験できると思います。
また、胴体の胸からお腹にかけてを、縮ませてしまう傾向も減ると感じることでしょう。
何度か繰り返して試してみてください。

現代人は、それほど腕や手を使わないために、肩から腕を重くしてしまっています。
肩こりや腰痛、姿勢の悪さの原因になっていますが、掌を上にすることはその軽減に役立ちます。

ペットボトルを持ち上げる

朝日カルチャーのクラスでは、参加者にペットボトルなどの「物を持ち上げる」動きを行ってもらいました。
何かを飲むためにコップを持ち上げたり、朗読しようとして本を持ち上げたり、管楽器を演奏しようとして楽器を持ち上げようとするときには、多くの人が背中を反らす傾向があります。
これにより、腕を動かすことが大変になるし、もちろん呼吸も浅くなります。

アレクサンダー・テクニークを使って、
1)頭と身体の動き(「頭が身体から離れて行って、そうすることで、身体がついていく」)を自分に指示しながら、
2)この場合は特に、背中が上下方向に縮まらないようにと考え
3)肩関節や肘関節の回転運動を使うことを考えて(腕の付け根の部分で持ち上げると思わないことが大切です)、
4)ペットボトルが持ち上がる軌道を考えることで(頭の動きを考えることを忘れずに)、動きを行います

こう行っても、多くの方が今まで自分で行ってきた動きをしてしまいます。
わたしが手を使ってガイドして、異なる動かし方があることを数秒教えるだけで、すぐに新しい動かし方が起こります。
今回の参加者も多くの方が、重さを感じないくらい腕が軽くなったと言っています。

アレクサンダー・テクニ-クを学ぶ

アレクサンダーは自分のテクニークを、コモンセンス(良識)を使うことだと言っていました 。
頭の動きが大切なことは彼のオリジナルですが、それを使って実践することを学び、自分の動きについての考えを変えていくときは、普通に考えれば理解できることの積み重ねです。
このレッスンを受けると、生徒さんが「分かってしまえば、なんで今までわからなかったのか不思議だ。」と言いうときがあります。
それは、当然と思ってきたことに疑問を持つことがなかったからです。
これを学んでいると、少しつづ疑問を持つ力が向上します。
(終わり)

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