前回は、中腰になるときには、脚の力を抜くことを調整すれば良いことを書きました。

そこで注意してもらいたいことは、全身の力を抜かないことです。
そうしてしまうと、この動きに必要な筋肉によるこの動きの繊細な調整ができません。
中腰になる動きの間中、頭と胴体は、頭頂が向いている方向に行こうとする必要があります。

アレクサンダー・テクニークの基本の「頭が身体から離れて行きながら、身体がそれについて行き」、を自分に言い、その後で
「そうすることで、骨盤の下から脚にかけての胴体を支える筋肉だけを、うまく力を抜いて行く」必要があります。
これによって、身体全体に適切な「トーン(張り)」が持てるようになります。
それがなぜ有効かについては、今もう一つ書いているブログの「プライマリ・コントロールとアナトミートレイン3」を見て下さい。

それでは、中腰になるときのコツについて、さらにいくつか見て行きましょう

2.股関節や膝の柔軟性がある方が手に力が入る

多くの人が、中腰になった状態で使っている手や腕に力を入れるためには、下半身を固めて安定させる必要があると思っています。
しかしそうすると、身体をバネのような全体として大きな力を得る、という人の本来の使い方ができません。
動物がその柔らかい身体部品を使って、速く動いたり相当な力を発揮できるのは、個々の部品を独立に使わずに全体としてそれらを協調させて動いているからです。
人もこの小さな身体をうまく使うことで、負担の少ない姿勢でパワーを出せます。

それには、力を入れるときに、床の方向に身体を押し付けるのではなく、床からの力が伝わるようにその反対の上方向に向かわせる必要があります。
そう考えを変えて、洗い物や風呂掃除などいろいろな動きで試してみてください。
試してみると慣れないので、最初は「これでは力が入らない」と思うことでしょう。

信じてもらうために、デモンストレーションとして、股関節・膝・足首を柔軟に動かしながら
1)風呂掃除のような動きで、力をいれることができること
2)ペアになって、手を合わせ力比べを行うときに、大きな力を出すことができること
を実際に見てもらいました。

これは、楽器の演奏や声を使うとき、スポーツなどのどの活動にも共通して使えます。

3.中腰になるのは、股関節、膝、足首の動きであること

自分で行うときに特に重要なのは、中腰になる動きが「股関節」「膝」「足首」の3つの関節の動きだと考えることです。
多くの人が、骨盤の少し上にある「腰」と呼ばれる良く分からない部分で身体を折り曲げようとします。
そこには、「股関節」「膝」「足首」の関節ほどに良く動く関節はありません。

前回のブログの中で、多くの人がイスから立つときに胴体を固めてしまうことについて書きました。
そこに書いたことは、中腰になる動きにもあたはまります。
脊椎全体を曲げる必要はなく、背中は「板」のように真っ直ぐ(もちろん脊椎の自然なカーブは持ちながら)なままでいることができるのです。

中腰になるときに身体を曲げることに慣れている人は、お腹や胸の辺りに力かかってていて、それを当然だと思っています。
その動きは疲れるものだと思い込んでいることでしょう。

【観察】
自分で動きを試してみたら、ぜひ他の人の動きを観察してみてください。
・電車で席に座ろうとする人の動き
・何かを拾おうとするときの人の動き
・イスに座ってから、何かを書いたり、パソコン作業をしようとするときの人の動き
・相撲の関取たちや、その他のスポーツ選手の中腰になる動き
・楽器演奏をこれから始めようとするときの人の動き

どのくらい脊椎を曲げてしまっているでしょうか。
「股関節」「膝」「足首」はどのくらい動いているでしょうか。
頭の位置はどうでしょうか。
(「股関節」「膝」「脚首」が良く動いている人は、バランスが取れた立ち方をしていて、頭が楽に前に行きます。
頭が前に行くことに怖れを持つ人が多く、その人たちは踵(かかと)に体重を乗せがちです。
これは、階段を降りるときの障害にもなります。)

アレクサンダー・テクニークの要の「頭が動いて、身体全体がついていく」はどうなっているかも見ようと試みてください。
これは、今までそれを見る感覚がなかったことなので、観察力が上がるには時間がかかります。
しかし、この観察力が上がることで、自分でもアレクサンダー・テクニークをもっと使えるようになります。

次回はさらに、中腰になるときの実際の脚の動きや、自分で行うときにどうするかを具体的に見ます。

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