先週金曜日(2018年5月18日)は、「疲労を軽減するアレクサンダー・テクニーク」の2回目でした。

アレクサンダー・テクニークで疲労が軽減できるのは、身体の余分な緊張や、精神に起こる余分なストレスを持たずに毎日の活動を行えるようになるからです。
そのためには、毎日の生活の中で意識してアレクサンダー・テクニークを使うことが必要です。

アレクサンダー・テクニークを学ぶことについて

アレクサンダー・テクニークが目指す結果は、どんな活動(動きを行うときにも、考え事を行うときにも)でも首の周りの筋肉を縮めることをやめて、頭が身体から離れるように動いて、身体全体がその動きに影響を受け協調的に働くようになる、というとても単純なことです。
ですが、このことを実現することはかなり大変です。
特にわたしたち大人はすでに色々な癖を身につけてしまっているので、アレクサンダーの言う「再教育」をしなければならず、それはまっさらに近い子供に教えるよりも難しいものです。

アレクサンダーは特に、わたしたちは何でも無意識的に行おうとする習性があるので、意識的に行う必要があってそのためにシンキング(考えること)が重要で、それがアレクサンダー・テクニークの要だと言っていました。
もちろん頭で「変なシンキング」をしていたら、逆にストレスを引き起こすし、何も活動できなくなってしまいます。
彼は、テクニークを学ぶことは「シンキングとは何か」を学ぶことだと言っていました。
わたしたちが普通に「考える」と思っていること(それは一人一人違うので、こう考えることも幻想なのですが)は、アレクサンダーの言うシンキングとは異なるものだと考えて下さい。

先日理容店で待ち時間に週刊誌を読んでいたら、作家の山田詠美さんのエッセイに興味深いことが書いてありました。
彼女が先生の宇野千代さんの教えで守っていることは、書いていて調子がでてきてとてもうまく進んでいる、と思うときには仕事をストップする、ことなのだそうです。
世界的に有名な哲学者で教育学者のジョン・デューイも、アレクサンダーから長期に渡ってレッスンを受け、彼からそれを学びました。
デューイは、考えが途切れて失われないようにするために、仕事に取り掛かったらそれを中断せずに取り組む必要がある、とアレクサンダーに訴えたのですが、アレクサンダーはそうではないことを彼に示しました。
後にデューイは、それを学んだことが最も大きなことだったと言っています。

日常生活に意識して使う

アレクサンダーを学んで行くためには、毎日の生活の中でこれはと思う動きに使っていくことが必要です。
その点では泳ぎを学ぶことや書道を学ぶことなどと同じように、練習することが必要です。
ただ、アレクサンダー・テクニークがそれらと異なっているのは、自分が何を考えているかに意識的であり続けることがその内容だということです。
その点でアレクサンダーは、泳ぎや書道と異なりそれ自体では意味がありません。
泳ぎや書を行うときに使うものだからです。
アレクサンダー・テクニークは禅によく似ているというヨーロッパの先生たちが多くいます。
動禅です。

いすから立ち上がったり、座ったり、歩いたりすることは誰もが毎日行う動作なので良い練習になります。
ただ注意すべきことがあります。
それらの動きはあまりにも多く行って慣れているため、いつもの方法に戻りやすいことです。
中途半端にアレクサンダー・テクニックを使う練習になってしまう危険があり、そうすると練習しているのに、役に立つと思えないことでしょう。

テクニークを学ぶことは、シンキング(考えること)の練習で、毎回自分に何が起きているかについて気づき、自分にどう指示を与えているか意識できるようになることが目的です。
楽にイスから立ち上がることは、その結果として起こっていることです。
練習するうちには、脚の筋肉が慣れてきて楽に立てることがあるでしょうが、それに満足してプロセスで行っているシンキングを行わなくなったら、それはアレクサンダー・テクニークの練習にはなりません。
もちろん練習を重ねるうちに、頭で考える負担は減っていきます(負担が増えるようなら、それは間違った練習です)。

そのためイスに立ったり、座ったりそれから歩くということで、アレクサンダー・テクニークを使おうとするときには、1日に何回かはアレクサンダーテクニークの練習だと思って使ってみることです。
毎回使うことはもちろんOK なのですが、中途半端になることを防ぐために、例えば1日3回はテクニークの練習だと思って使うことが役に立ちます。

自分が行う動きにアレクサンダーを使おうと考えると、中途半端な使い方になってしまうことが多いので、意識してアレクサンダー・テクニークを使うことのついでにその動きを行う、というように考え方を逆転させると良いでしょう。

そのような意識を持ちながら、イスから立ち上がる、歩き出す、そして戻ってイスに座る、の動作を行ってみてください。
そのやり方については1回目のブログや、以前のブログの「アレクサンダー・テクニークを使って、イスから立ち上がって歩き出す」を見て下さい。

この日に行った内容と、特に取りあげた中腰になる動きをどのように行うかは、次のブログで書きます。

次へ →

← 1回目