アレクサンダー・テクニークの「プライマリ・コントロール」をトーマス・マイヤースの「アナトミー・トレイン」との関連を見ています。

2回目の今回は、「アナトミー・トレイン」の概要です。

身体は全体としてつながっている

人の身体の一部分が動くと、他の部分が影響を受けます。
それは身体に、構造的にそのようなしくみがあるからです。
そのようなつながりは、個々の筋肉の動きだけでは、わかりません。

例えば、片方の手のどれかの指を、上下に動かしてみてください。
その動きには、前腕(肘から手首の部分)にある筋肉が使われます。
でも、小さな動きにはそれほど感じられませんが、大きく動かそうとすると、肘から上の部分や、肩、首にかけて何かの感覚を感じます。

そうしながら、頭を身体の方に少し押し付けてみると、指が動かしにくくなることを感じるでしょう、
指の動きはそれを動かす筋肉の働きだけでないことは、簡単に分かるのですが、従来の骨と筋肉だけの解剖学ではこのことを説明してくれません。

説明しないだけでなく、ある動きを行うときに、どこか特定の筋肉の動きについて考え過ぎてしまうと、頭を脊椎に押し付けてしまい、かえってその動きの妨げになります。
(そのためアレクサンダーは、テクニークを学び始めたばかりの人には、解剖的な知識を学ぶことは良くないと言っていました。
その知識に囚われてしまい、全体のことを考えなくなってしまうと、考えていたからです。
でも、ある程度学んだらそれは必要だと思っていて、弟のARには解剖学を学ぶように勧めています。)

トーマス・マイヤースとアレクサンダー・テクニーク

トーマス・マイヤースはアレクサンダー・テクニークを良く知っています。
著書「アナトミー・トレイン」の中で、彼がその旅を始めたのは、
「人類学者のレイモンド・ダートが、アレクサンダー・テクニークを学んだ体験から見つけた『二重らせん構造』の論文を読んだ」
からだと記しています。

また、この本の3章「スーパーフィシャル・バック・ライン」で「後頭下筋」を説明をしながら、
「人は、動きを始める前に「首と頭を引き込む習慣」を持っていて、アレクサンダー・テクニークの先生たちは何年もかけて生徒にそれを取り除くことを教えているが、それは価値があることだ」
とも書いています。

人体は「結合組織網」で、そこに「筋-筋膜経線」がある

「結合組織」というのは聞き慣れない言葉ですが、大まかに言えば、身体のほとんど全てを指しています。
そこから除かれるのは、脳を含んだ神経関係、筋肉、皮膚などだけです。(「結合組織」については、後に少し詳しく説明しています)

マイヤースは、人体は、骨で構成される「骨格」と、それを覆う袋状の「筋-筋膜 [myofascia]」(筋肉と筋膜)で構成されていると説明しますが、ここでの「筋膜」は、さきほどの「結合組織網」(そこから、骨と血液は除きます)のことです。

ここでとても重要なのは「筋膜 [fascia]」です。
わたしたたちは、「筋」と「膜」という漢字から、普通は「筋肉を覆っている薄い膜」のことだと考えてしまいます。
確かにその使い方もあるのですが、彼の定義はそれではありません。彼の使い方では、「筋膜」は、腱や靭帯と、さらにはその周囲も含んだ身体全体のネットワーク(網)です。

その骨格を覆う「筋-筋膜網」は、ナイロンシートのような、どちらの方向に引っ張っても同じ反応をする均質なものとは異なります。
ある方向に引っ張ると、より大きく他の身体部分が動くからです。

それを身体全体で見ると、力が作用する長い線があるように見えます。
マイヤースは、その線のことを「筋-筋膜経線 [myofascial meridian]」と呼び、「アナトミー・トレイン」という列車が通る、線路だと説明します。
(彼は、この線のことを「経線 [meridian]」と呼んだり、単に「ライン [line 線]」と呼んだりしています。)

著書では、基幹となる
①SBL [Superficial Back Line] (浅い層にある、身体後面のライン)
②SFL[Superficial Front Line] (浅い層にある、身体前面のライン)
③LL [Lateral Line] (身体側面のライン)
の3つを始めとして、いくつかの螺旋のラインや、腕へのラインなど、11個を取り上げて説明しています。

わたしたちがアレクサンダー・テクニークとの関連で特に関心があるのは、「頭の動き」がどう身体全体に影響を与えるか、です。
その観点から、「筋-筋膜経線」を見ると、、上記の3つの線を始めとして、多くの線が頭を通っていることがわかります。。

次回は、それらの「筋-筋膜経線」とアレクサンダー・テクニークとの関連を見て行きます。

【参考】「結合組織 connective tissue」
人体組織の細胞は、驚くべきことに僅かに次の4種類なのだそうです
①神経細胞 (脳や、脊髄を中心に、身体各部に指示を送る神経メカニズムを構成するもの)
②筋肉細胞 (筋肉を構成する細胞です)
③上皮細胞 (身体表面の「表皮」や、臓器の粘膜部など)
④結合組織細胞 (骨、軟骨組織、靭帯、腱、筋膜シート)

この4つを見ると分かるように、④の「結合組織」は、①の神経系、②の筋肉、③の皮膚以外の物です。
それならば、身体の構成要素のほとんどが「結合組織」に分類されることがわかります。
結合組織は、次の2つに大きく分類されます。
「特殊結合組織」—骨、軟骨、血液など
「固有結合組織」—上記以外で、器官などを保持するタンパク質繊維や、腱、靭帯など

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