教える立場になったときに、わたしたちは、正しいことを教えようとします。

もちろん誤ったことを教えるわけにはいかないので、それは間違っていません。
問題は、全てのことが整然としていて、正しいことの世界に生きることが大事だと思い込み、その世界観だけを伝えてしまうことです。

みなさんは、世界に闇が無く、闇があるとすればそれは悪いものだ、というように振る舞っていませんか。また、自分の弱い点(闇)を見ないようにしていませんか。

パーカーは「自分の生き方に語らせる」の中で、それは「自分の魂」を衰弱させると言います。
自分の闇に入り込むことで「うつ」から抜け出すことができたときのことを、
「始めて、ありのままの自分に安心を感じ、この世界に楽にいることができると感じることでした。」
と、彼は書いています。

長所と共に、弱さ・欠点・闇を抱き続けることで、自分の「全体性」を保つことができ、そうすることで、「それらの支配力を弱めることができる」と彼は言います。

逆に、そうせずに、弱さをもたらす自分の内面を否定する人は、その自分の「影」を他人に投げかけてしまうのだそうです。
パーカーは、人を率いるリーダーの「影」として、次の5点を良く見られるものとして、5章「内面から人を導く」の中で詳しく説明しています。
簡単に紹介します。

1)「自分のアイデンティティと価値に対する不安」

自分に自信がないから、部下や生徒など、他の人のアイデンティティや価値を奪い取ろうとします。

2)「世界が戦場で、人の利益に敵意を持っている、という思い」

わたしたちは、自分に対しても、他の人に対して、「勝つか負けるか」という表現を、とても多く使いがちです。

3)「全てに関して、究極の責任は自分にあるという思い」

全てに対して、自分がなにかをしなくてはいけないと思い、任せることを忘れていませんか。

4)「生きていく中で日常的に起きている混沌に、感じる怖れ」

人の意見の相違や、細かいことが整然と動いていないことに対して、必要以上に反応していませんか。

5)「死の否定」

全てのものがいつかは死ぬことを、否定していませんか。
何か新しいことを行おうとするなら必ず起こる「失敗」という「小さな死」を怖れていませんか。

 

これらは、自分にも、周りの他の人たちの中にも良くみることでしょう。

パーカーは、これらのモンスターを乗りこなすためには、「内面のワーク」を深める必要があり、そうすれば、「怖れ」から行動せずに、それを認めながら、同時にそこにある「信頼」「希望」「確信」からリーダーシップを取ることができると書きます。

わたちたちは、「良いもの」「正しいもの」「美しいもの」に向かうように教育されてきていると思います。
それは、客観的に誰が見ても否定できないので、先生にとってもある意味で教え易いものです。

その一見整然とした「光」の世界だけでなく、パーカーの言うように、生きることの不可解さ(ミステリー)を見ることで、今まで「何か自分に足りない」と思ってきた部分に手がかりを得られることでしょう。

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