今回は、アレクサンダー・テクニークとは関係ありませんが、自分自身を考える上で参考になるパーカー(Parker.J.Palmer)著の「自分の生き方に語らせるLET YOUR LIFE SPEAK」を紹介します。
残念ながら邦訳はないので、原書または、Amazon Kindle等で読むしかありませんが、平易な英語で書かれているので、読みやすいものです。

本のタイトル「自分の生き方に語らせる」を著者のパーカーはクェーカー教徒の古い諺から取りました。
この言葉の彼の最初の理解は、
「最高の真実と、価値観で、自分を導くようにしなさい。
自分が行う何についても、その厳しい基準に見合うようにしなさい。」
(「 」の部分は著書からの引用です。以下同じ。)
でしたが、それから30年ほど経った後で、
「人生で何を意図しているかを、自分の生き方に告げる前に、自分の生き方があなたをどうしたいかを聞くように耳を傾けなさい。
自分が本当だと思うこと、大事だと決めたことを生き方に告げる前に、自分にとって本当のことは何か、何が大事かを、自分の生き方に語らせなさい。」
と考えるようになりました。

それは、わたしたちには
「『潜在的な可能性』とともに『制約』がある」
からで、
陶芸家が土を扱うときのように
「材料の特性を理解しないで『何をなすべきか』を探せば、作り上げようとする自分の人生は、不格好なだけでなく、自分自身と周りの人の生活が危険になる」
と書いています。

彼は、
「わたしたちは生まれながらの『才能』を持ってこの世界に到着します。
そして、自分の人生の最初の半分を、それをあきらめるために、または他の人のために使うことに費やしてしまいます。
若者は、その人の『本当の自分が誰か』には、ほとんど関わりのない周りの人たちから、期待を寄せられます。
その人たちは、『自分であること』とは何かを考えずに、わたしたちをある状況に適合させようとします。
家庭、学校、職場、宗教コミュニティで、わたしたちは、『本当の自分』から離れて行き、成功のイメージに向かうように訓練されます。」
と彼は続けます。

これから分かるように、この本は、そのような体験で苦しんできた人のための本と言えるでしょう。

でも、
「そうなるように生まれてきた自分になる」
ことには、
「(自分とは違う)他の人になるよりも、もっと大きい要求がある」
のです。

この本は、それほど長い本ではないのですが、次の章立てで構成されています。
1章 生き方に耳を傾ける
2章 やっと自分自身になる。
3章 道が閉ざされたとき
4章 降りて行く
5章 内面から人を導く
6章 季節がある

3章のタイトルの「道が閉ざされたとき」にあるように、人は、人生で起こるいろいろな出来事によって、自分の「制約」を知らざるを得なくなります。
それは実は悪いことが起こったわけではなく、「道が示される」ことだとパーカーは書きます。
そこから、ようやく自分の特性に合わせた生き方をしようという気持ちがでてきます。

それには、自分の特性の良い面だけでなく、「制約」のもとになっている、「闇の面」を見なくてはいけません。
それを避けようとするのではなく、4章のタイトルのように「降りて行く」必要があり、

それを見ようとしないために、人は
「他の人の仮面を被ろうとする。」
と彼は書きます。

避けようとせずに、自分の闇に「降りて行く」ことを行えば、それは、長所でもあることに気づきます。
そうすれば、外側に見せている、自分の仮面で生きることをせずに。
そして、
「自分の全体性を抱き続けることが」
ができます。

そこから、5章のタイトルのように、「内面から人を導く」ことの可能性が生まれます。

それは、人を教えたり、人の上に立つ人にとって、自分の特性とつながりながらその役割を果たせてくれます。
親は、子を導きますし、導くことは、多かれ少なかれ、誰もが行うことです。

パーカーは、これらを通り抜けるときに、混乱しながら、「うつ」の体験でどく苦しみもしました。そこから
「直接的な旅もあるし、迂回する旅もあります。
英雄のような旅もあるし、怖れを持ち混乱の中で行う旅もあります。
どの旅も、正しく見れば、わたしたちの深い喜びと、世界が必要とするものとが出会う場所に、連れて行ってくれるものです。」
「犯した間違いなしには、わたしは自分自身の真実と天職 [my calling] を知ることはできなかったことでしょう。」
と書いています。

この本は、彼の実体験を中心に、その旅がどのようなものかを、とても分かり易く説明してくれます。

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