春休みの先生ワークショップが終わりました。
今回は参加者は少なかったのですが、過去に参加された方々だったので、より深い内容になりました。

二日間の中で何度も現れてきた特徴的な内容は、
「先生の話し方と振る舞いの小さな変化で、その先生と「教室という場」への印象が変わり、生徒の参加しようとする自然な気持ちが出てくる」
ことでした。

生徒のいる教室に入って行くときには、色々な雰囲気を感じます。
朝のSHRでは、毎日違うことでしょう。生徒を個人で見れば、家で起こった親子ゲンカの影響を受けていることもあるし、夜更かしをして、疲れが見える生徒もいるかもしれません。
授業では、特に中学校や高校ならば、前の時間の影響を引きずっていることを感じます(体育の後はさまざまですし、怖い先生の後の固い雰囲気や、単調な先生の後の反応の悪さがあるかもしれません)。
暑さや湿気などで、影響を受けているときもあります。

もちろん、先生自体もいつも変わっています。体調が良いか悪いか、私生活での出来事などにより。
もし、ヒューマニティ を謳い上げる本や映画を見た後だったら、より優しい気持ちで教室に入っていけることでしょう(生徒の態度を見たら、それは幻想だったと感じるときもありますが)。

生徒に接する最初の瞬間

最初はいろいろでも、先生が教室に入るその瞬間から、先生と生徒との相互作用で雰囲気が変わっていきます。
今回のワークショップでは、「教室に入るときから、最初に何かを話すまで」の短い場面を取り上げて、いつもと違う考え方を持って行ってもらいました。
それだけで見ていた人は、もう大きく感じが変わったことが分かります。

この変化は、行っている本人はそれほど感じないのですが、見ている人には、はっきり分かります。
このことは、先生が自分だけではなかなか変われない原因の一つです。
教えるときの振る舞いで、先生が有効だと思ってやっていることは、あまり生徒に効果がなく、重要視をしていなかった何気ない行動が、実は大きな影響を与えているからです。
これは、参加者がいつも驚くことの一つです。

教えている内容と同じくらい、ときにはそれ以上に、先生が「自分をどう使って伝えているか」が、生徒の学習に大きな影響を与えています。
このことについては、多くの先生が多少は知っていることでしょうが、実際に変化したという自分の体験や、他の先生が変わることを見る機会が少ないため、それほど重要視されません。

何が小さな変化を作り出すか

「小さな変化」と書きましたが、それは、「熟練の先生がなぜ生徒を惹きつけることができるのか」を、授業を見ていてもわからないようなときに起こっているもの、と考えることができます。
その「小さな変化」は、比較的簡単に起こるものと、長期間の取り組みが必要なものとがあります。

最初に、簡単に変化が起こるものの方から見ていきましょう。
ワークショップの1日目は、「話す」という、比較的簡単ですぐに変化が起こるものについてでした。
「話す」ことに対しては、いろいろな考えが持っていることでしょうが、基本的には自分で作り上げてきています。

「話し方」の指導を受けて良いと思っても、どういうわけか、実行する気になれなかったことはないでしょうか。それは、自分全体の使い方が話し方に影響しているからです。

ワークショップでは、今まで目を向けることが少なかった、生徒に対しているときの自分全体の使い方を扱います。
興味深かったのは、長年アレクサンダー・テクニークを学んできた人でも、それほどの経験が無い人でも、同じように変化が起こったことです。
もちろん、経験により、定着仕方や理解には違いがあるのですが、誰にでもすぐに変化が現れるという点は、とても興味深い点です。

次に長期的に起こるものですが、それは、その先生が、経験し、考えることから来ます。
一朝一夕には変わらずに、先生が年齢を重ねていくうちに、生きることに対してや、教えること、教えている内容への思いが変わることから来るものです。
それについては、すぐにワークショップで何かできるわけではないですが、教えるときの「自分がすでに持っているものと、つながることの重要性」については、示すことができます。
これがを理解できれば、自分についてさらに考えていけて、それにより教え方が変わることでしょう。

その1つのきっかけとして、2日目に扱ったのは、自分の特性を過去の出来事に戻って考えることでした。
詳細は省きますが、先生である自分が、どういう特性を持っていて、何に惹かれていて、なぜ教えているかを考えてもらいました。

先生が自分の特性に意味を見い出せば、生徒それぞれが持つ特性に対しても、もっと眼を向けることができますし、先生として、それを大事にする生き方を、実例として生徒に示すことができることでしょう。

おわりに

このワークショップは、知識を伝えるというものでなく、先生が毎日経験している現実の場面を、どう活き活きと楽しめるようにできるかという、実際的なものです。
そのため、参加者の問題意識や、経験が、内容をより豊かなものにしてくれます。
今回もわたしにとって、考える材料を与えてくれた得るものの多い時間でした。
参加された皆さんありがとうございました。

次回は、2018年8月8日(水)、9日(木)、10日(金)で行います。
既に申込みを受け付けていますので、興味を持たれた方は、ぜひご参加ください。

 

参加者の感想

■1日目「生徒に伝わる言葉と声の作り方」

全身で語るつもりで神経を使う、とにかく頭を使うことが大事なことがわかりました。
話すときに引こうとしないで、とにかくよく考えて、生徒に伝えるように考えながら話したいと思います。
模擬授業で、頭や肩の位置に気をつけて考えながら話すようにするだけで、ガラッと生徒をひきつけられるようになるのにびっくりしました。
杜子春の朗読で、手を参加させるだけで、またその後で、使っているつもりで話すだけで、声も伝わり方も大きく違ってとても面白かったです。
生徒達も自分もお互いに楽になるwin-winな状況を作っていきたいです。
(A.S.さん 英語)

またまたたくさん学びがありました。
他の人がやっていることを見たりフィードバックをもらうことで、自分のやることへの信頼が増しました。先生の在方が教室の雰囲気をどうにでもできるということに(良い循環をもたらす)、 あらためて身の引き締まる思いとともに、希望も見いだしました 。
意識をそらさないで、アレクサンダーを考え続けることで、生徒への印象が変わることを学びました。
(R.O.さん 音楽)

■2日目「自分の特性を生徒との関係に活かすには」

集中しすぎると体が固くなって動きにくくなることがわかりました 。
話す内容を考えすぎないで、脳に任せて、自分の脳を信頼し、その結果を楽しむことが大切だとわかりました。
教室で話すことをすべて生徒に伝えたいことにして、自分の気持ち切らさないで行きたいと思います。
自分の特性については、普段あまり考えないことなのでずいぶん頭を悩ませました。担任一年目のとき、何をするにも右往左往して、他の先生の真似なども随分したのですが、うまくいかないことが多かったことを思い出しました。自分の特性を無視していたからなのかなと思いました。
前日の復習もたっぷりできてよかったです。新学期からまた色々試してみます。(A.S.さん 英語)

(とても基本的なことですが) 頭(脳) を使って体を動かせば、体の負担が激減し楽になる。自分の今の状況には必要だと感じました。
声の出し方・体の使い方で生徒への伝わり方が変わることを学びました。逆に自分の声の出し方が、いかに伝わらない出し方であったのか実感しました。
人に話すときの姿勢、頭から体につながる意識を持ってそれを続けたいと思います。
頑張りすぎると結果が出ないのみならず、聞き手が疲れることを知った。頑張りすぎない生活を明日から始め、必ず続けたいと思います。とても貴重なワークショップでした。教員としてだけでなく、一人の人間としてどのように自分に向きあい、他人と関わり、社会の中で生きていくのかを考えさせられました。
ありがとうございました。明日からまた前進するための活力になりました。
(A.H.さん 英語)