先週金曜日に、新宿・朝日カルチャセンターでの「呼吸と声を改善するアレクサンダー・テクニーク」2回目を行いました。
今回は「日常会話での声の出し方」がテーマでしたが、引き続き呼吸に興味を持つ方が多くいらっしゃいました.

前回の1回目は、今までと異なる身体の使い方で姿勢とバランスが変わると、呼吸が変わることを体験してもらいました。
今回は、最初に身体の使い方の復習を兼ねて、昨日のブログで取り上げた「イスから立ち上がって歩く」動きを行ってもらいました。

前回はまた、立ち姿勢について自分と他の人を観察し、自分の特徴に気づいてもらいましたが、今回は「話すこと」について、自分と他の人を観察をしてもらいました。
その後で、何人かの参加者が抱えている問題について実際にワークしながら、どのようにアレクサンダー・テクニークを使えるかのデモンストレーションを行いました。

その中から多くの人にも起こる3つの点について説明しましょう。

(1)息を吸うときに背中をそらしてしまう

多くの人が息を深く吸うときに背中を反らします(ラジオ体操の悪影響でしょうか)。
そして、逆の動作を行って、身体の前面を落し(肋骨の上で横方向に伸びている「鎖骨(さこつ)」という骨があります。この骨が下がることが観察されます)ながら、息を吐いたり、声を出したりします。
この動きを起こさずに、深く息を吐いたり、大きく声を出そうとすると、いつもの動きと反対なのでかなり大変です。
不可能とさえ思えます。
でも、オペラ歌手の発声を見れば、そうせずに豊かな声が出せることがわかります。

身体の前面を落す動きは、身体全体を縮めて息を吐こうとする考えから起きることがあります。
これがあると感じたら、身体全体が(頭も、脚も、足も、腕も、指先も、そして腹部や胸も)外方向に伸びて行くと思いながら、息を吐いてみてください。(次回の「テンセグリティ」のブログをぜひ読んでみて下さい)

個人個人で、その原因はさまざまですが、身体の前面が下がらなくなると、腹部の「おへそ」の下で横に走っている筋肉 (腹横筋(ふくおうきん))が、息を吐くときに使われるようになります。

そのように、息を吐き切った後、「背中をそらさずに空気が入ってくる」ことを許せば、肺の背中の部分に息が入ることが分かることでしょう。
息を大きく吸い込もうと思わなくても、深い呼吸が起こります。

(2)声で苦手な音を出そうとすると、頭を後ろに引き下げてしまう

「頭を後ろに引き下げる」ことは、アレクサンダーが喉の障害に取り組んだときに、自分に観察したことでした。
発声だけに限らず、人は苦手なことをするときに、「苦手だ」と思うだけで、頭を後ろに引き下げがちになります。

何かをやろうとするときに、余計な力を使うときにもそうなっています。
人がイスから立ったり座ったりするときの頭の動きを観察してみてください。
10人中9人は、どちらの動きにも、頭を後ろに引いています。それが普通なので、疑問に思う人は少ないことでしょう。

そのためにアレクサンダー・テクニークでは、「頭が動いて」と言うことで、頭を後ろに引き下げることを防止します。

でも、そう指示しても「身体の前面を落とさずに、大きく息を吐く」ことと同じように、それは不慣れな動作なので、簡単には変わらないことが多いものです。
先生の助けを借りたり、自分の感覚では「とても大きく逆方向に動かす」ようなことをやってようやく変化が起こります。
その変化を、ワークを受けている本人より、周りで見ている人の方がはっきりと識別します。

「頭が動く(身体から離れていく)」を起こしながら声を出そうとすると、喉、口、舌などの動きは変化せざるを得ません。その結果、苦手だった音が、楽に出せるようになります。

(3)気持ちが変わるだけで体の緊張が変わり、声は大きく変わる。

人は普通、自分の声がある程度一定していると考えていますが、実はかなり変化しています。
でも、本人の自覚が無いので、普通は認識されません。
他の人を観察するように自分を観察できれば、ときどき起こっっいてすでに自分のものになっている良い状態を、より多くの機会で使えるようになるでしょう。

「苦手な音を出す」の先ほどの例で触れたように、自分が苦手だと思うと、すぐにその思いが体を緊張させ、頭を後ろに引き下げさせてしまいます。前に押し下げて、身体が固まることもあります。
それがさらに、心配な気持ちを強め、悪循環が起こり、身体さらに固まり、柔軟性を失ってしまいます。
でもこれは、多くの人に、いろいろな場合で起こっていることです。

このようなときは、解決をしようとあせる前に、起こっていることを観察することが必要です。
自分に起こっていることを、他の人の他の動きの中で見ることができると、その特性が理解できます。
その理解が解決につながります。

これらの理由で、前回も、今回も、「観察」することの重要性を強調しました。
ぜひしばらくは、起こっていることと、そのときの自分の感情等を観察してみてください。

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