先週から、新宿の朝日カルチャーセンターでの「呼吸と声を改善するアレクサンダー・テクニーク」 が始まりました。
ヤスヒロが一人で担当するクラスで、月1回のクラスが3ヵ月続きます。
今回は14名と、多くの参加者がいらっしゃいました。

1回目の「呼吸」の内容について、補足説明を加えながら紹介したいと思います。

(1)アレクサンダー・テクニークの始まりは「声と呼吸」

F.M.アレクサンダー(1869-1955)は、俳優として声枯れを起こしてしまう自分の「使い方」を改善しようとして、アレクサンダー・テクニークを見つました。
これにより、声枯れを克服したアレクサンダーは、朗誦(ろうしょう)家として成功を収めます。

それを見た舞台俳優や牧師、政治家が、その技術を学びたいと生徒になりました。1894年のことです。
最初は声のためのテクニークだったのですが、新しい身体の使い方が、呼吸を大きく改善することが認識され、医師たちが患者や送ってくるようになりました。
1904年にアレクサンダーはオーストラリアからロンドンに渡りましたが、最初の著書を出版する1910年頃まで、自分のテクニークを「新しい呼吸法」として宣伝しています。

アレクサンダー・テクニークにとって「呼吸と声」は、その原点と言えます。

(2)アレクサンダー・テクニークは、他の呼吸法とどう違うか

当時、結核に有効な治療法はなく、ロンドンは石炭による大気汚染がひどく気管支系の疾患を抱えた人が多くいました。
生死に関わる問題なので、現代では、考えられないほど呼吸への関心が高かった時代です。
既に多くの呼吸法がありました。
アレクサンダーは鼻呼吸を薦めたそうですが、これは当時既にあったベーンケ呼吸法 (Behke system)で言っていることです。
アレクサンダーはこれらを知っていました。

アレクサンダーの方法は何が新しいのでしょうか。

アレクサンダー・テクニークは、身体の自然な使い方を可能にします。
身体のどこかをひどく緊張させることなく、呼吸を含めたいろいろな動きをできるようにします。

「呼吸」も身体のどこかの一部分の問題ではなく、全体が協調して起こるものとアレクサンダーは捉えました。
そのため、最初に自分のどのような使い方が、協調的が動きを妨げているかを知る必要があります。

(3)フルチェストブリージングとそれを妨げる身体の使い方

アレクサンダーは自分の方法を「フルチェストブリージング(胸を十分に使った呼吸法)と呼びました。

朝日カルチャーのクラスでは、スケルトンを使って肋骨を示し、肺の図を見てもらいましたが、みなさんはぜひ肺の図をインターネットで調べて見て下さい。
肋骨の中は、心臓を除いてほぼ肺です。
思ったより大きく、上方向にも、後ろ側にも広がっています。
肺の全体に十分に空気が入るためには、周りの筋肉に余計な力が入らないようにする必要があります。

今回のクラスでは、普段の立ち方を変えて、余計な緊張を無くしてもらいました。
それにより、呼吸が大きく変わり、歩くことにも影響を及ぼします。

ヤスヒロのハンズオンワークを受けた後で、多くの参加者が
「努力をほとんどせずに、大きく呼吸できるようになった」
「軽く歩けるようになった。」
という感想を言ってくれました。

これは、多くの人たちが持つ次の「立ち姿勢の3つの悪癖」が、ワークにより無くなるか、少なくなったからです。
(1)腰を押し出した姿勢
(2)肩を後ろに引いた姿勢(きをつけのやり過ぎの姿勢)
(3)立っているときの脚の緊張

アレクサンダー自身が著書「人が受けついでいる最高のもの」の中で、悪い呼吸に伴う特徴を書いていますので、それをこの最後に載せておきます。

(4)観察をすること

今回は参加者が多くいらっしゃいました。
ヤスヒロが一人々にワークしたときに、(3)で上げたパターンが繰返し、繰返しが、現れていたことで、とても印象が深かったことでしょう。
このことが、グループでこのワークを受けることの最大のメリットです。

アレクサンダー・ワークを受けたときの変化は、本人よりも見ている人の方が良く分かるものです。
他の人を見ることで得られた理解は、学んだことが持続して残るために、とても効果があります。
ワークを、自分の体験による感覚で覚えようとしないで、他の人に起きたことを思い浮かべることによってその意味を復習することは、本当に役に立ちます。

参加者には、いろいろな人の立ち方を観察し、どういう呼吸になっているかを考えてみることを宿題にさせてもらいました。

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F.M.アレクサンダー「人が受け継いでいる最高のもの」パートⅢより
【訳 ヤスヒロ 文章の一部を変えています。】
(a) 喉頭をひどく押し潰していて、横隔膜も押し潰している。
(b) 胸の上部を持ち上げ、多くの場合で肩もそうしている。
(c) 腰のあたりで、背中を反り返らせている。
(d)お腹を突き出していて、腹部内部の圧力に異常な乱れがある。
(e) 頭がかなり後方にやっていて、ひどく首を緊張させて縮めている。
(f) 胸の各部をひどく拡げ過ぎているのに、一緒に拡がらなくてはならない部分、特に背中の腰のあたりの部分を縮めている。
(g) 息を吐くときに、胸の上部をひどく落ち込ませ、胸部内部の圧力を有害なまでに高め、血管壁の細い静脈や心臓の心房の血液を堰き止め、心臓の動きを妨げている。
(h) 喉頭をひどく押し潰しているため、舌を適切な位置で自然に動かすことができず、正しく口を開けて、本当の「アー」の音の発声に必要な共鳴空間を作ることができない。
(j) 口を開くときに、頭を後方にやってしまう。

朝日カルチャー「呼吸と声を改善するアレクサンダー・テクニーク」の2回目→

参考:「立ち姿勢の3つの悪癖」